今日の「三丘セミナー」のテーマは"月の起源を解き明かせ!"。講師は、京都大学大学院理学研究科宇宙物理学教室助教の 佐々木 貴教 先生です。宇宙物理学教室...なんて、いただいた名刺を見ているだけでも心がウキウキしてきそうな感じです。
私は、別の業務の関係で講義時間の半分くらい遅刻して参加したのですが、先生の話のほとんどが難しすぎてチンプンカンプンという感じでした。勿論、ひとつ一つの話は私のような素人が理解できるはずもないものですが、不思議なことに、聴いているうちにワクワクしてきました。自分の生きてきた時間とリンクするような物語だったからです。
「月の石」という言葉を聞いた瞬間、私の記憶の中に鮮やかに蘇ったのは1970年に大阪で開催された万国博覧会のアメリカ館です。小学生だった私は遠足で訪れ炎天下に長蛇の列を作って入館を待ちました。漸く入れた館内のちょっと高いところに展示されていた「月の石」を見て、当時の私は"ちょっとピカピカしてるけど普通の石やん"と思った記憶があります。その石が、月の起源を探る研究に大きすぎる影響を与えていたことを今日はじめて知りました。
「月の石」の成分と地球を比べた時、共通する点が多かったことから、月の起源を突き止めようとする科学の世界が様々な仮説やそれに伴う議論で沸騰したそうです。そんなお話を楽しそうに語る佐々木先生は、科学者としての浪漫を語っておられるのだなぁと思いました。
講義終了後、凄い光景を見ました。生徒が佐々木先生のところに行って熱心に質問しているのです。その中の一人は私も知っている生徒でした。彼と私が出会ったのは天文部の観望会の夜です。「三国丘高校を選んだ理由はなに?」と私が訊いたとき、彼ははっきりと答えてくれました。「NASA研修に行くためです」 なんと清々しい、明快な答えなんだろうと感動したのを覚えています。その彼が、今、私の目の前で佐々木先生に質問をしている...これこそが三国丘高校の魅力と断言できるのではないかと思いました。
そんなことがあった直後に、校長室で先生にお礼を申しあげている時、ふと訊いてみたくなって、こんな質問を投げました。「佐々木先生は、どうして今の研究をはじめようと思ったのですか?」
私は、てっきり、さっき質問していた彼のように、最初からずっと月や星に関心があって、その延長線上に先生の今があるのではないかと思っていましたが、違いました。先生はまったく別のことに興味があったらしいのですが、ある教授の授業に衝撃を受け、それ以来この道一直線で今日まで来たそうです。人生ってどこでどう変わるかわかりませんし、先生の恩師は人の人生を変える授業をされたんだなぁと思いました。今日の講義が、受講した三丘生の人生を方向づけるようなことになったら...そう考えるだけで背中がゾクゾクしてきました。
いろんな高校で講演会等はあると思いますが、「三丘セミナー」はこう言った"濃さ"みたいなものが他とは全然違うんじゃないかと思ったりします。佐々木先生、ありがとうございました。