最初に、77期生や保護者のみなさんに謝らせてください。本当に申し訳ありませんでした。
式辞を読んでると、何人もの生徒や保護者、担任の顔が次から次へと浮かんできて、涙が止まらなくなってしまいました。浮かんできた顔は、満面の笑みもあれば失意の表情もありました。それぞれのシーンが鮮やかに蘇ってきたら、涙をこらえることができなくなってしまいました。大事な卒業式で、校長が演台で言葉に詰まるなんて、とんでもないことです。最後は、卒業生の顔すら見えない状態でした。なんとか式辞を読み終わった直後に大きな拍手が聞えたとき、演台に涙が落ちていることに気づきました。
卒業式の写真は、次の校長ブログで紹介させていただくこととして、取り急ぎ、式辞を掲載させていただきます。涙声で聴き取れなかったかもしれませんので、是非読んでください。
77期生のみなさん、卒業おめでとうございます。今日はみなさんの門出を祝うため、三丘同窓会とPTA、更には定時制の准校長先生にもご臨席をいただいております。お忙しい中お越しいただき、心から感謝を申しあげます。保護者の皆様もこんなにたくさんお越しいただき、体育館は超満員です。
在校生や教職員を含め、ここにお集まりいただいたすべての皆様の温かい気持ちが77期生を包み込んでいます。三国丘高校を代表して厚く御礼申しあげます。
さて、去年の今日、私は、卒業していく76期生に魔法の言葉を贈りました。その言葉は「最後はハッピーエンド」です。喜劇王チャップリンも「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」と言っているように、自分の人生を遠くから眺めて「最後はハッピーエンド」と決めてしまうことで、どんなに辛いことがあっても、その先に希望の光を見ることができる、と語りかけました。
今日は、もっと魔力の強い言葉を贈ります。それは「幸せはあなたの心が決める」です。実はこれ、ある本のタイトルです。著者は、渡辺和子さん。200万部を超える大ベストセラーとなった「置かれた場所で咲きなさい」を書いたシスター、と言えば分かる人が多いと思います。
渡辺和子さんは9歳のある日、父親と寝ているとき、私邸に青年将校が押し入り、最愛の父を亡くしました。2・26事件です。そんな彼女が「幸せはあなたの心が決める」と言っているのです。
みなさんがこれから生きる人生は、確かに山あり谷ありです。努力すれば、必ず良いことがあるとは限りません。いくら頑張っても、芽が出ないときもあります。
私は、みなさんの三倍以上生きてきましたが、人生のどん底で、「私は幸せです」と言い切れる人に、一度も逢ったことがありません。みんな、嘆き苦しみ、自分の不運を呪うのです。渡辺和子さんも、9歳の時に「幸せはわたしの心が決める」なんて思えたわけではありません。そう思えるようになるまでには、相当の時間と得難い経験が必要でした。
だから、この言葉は、今のみなさんにではなく、未来のみなさんに贈ります。いつか、生きていくのが辛いと感じたときにこの言葉を思い出してください。
その時、あなたは、耐えられない辛さを感じているのですから、その現状を幸せだなんて思うのは所詮無理なことです。辛いと感じているあなたの心に向かって、こう語りかけてください。「今が一番辛いのだから、この辛さはやがて少しずつ和らいで、いつの日か自分は幸せだと思えるようになる」。これができたら、それだけで上等です。「幸せはあなたの心が決める」のですから。
76期生の先輩たちには、宿題を出しました。77期生のみなさんにも同じ宿題を出します。あなたにとって、幸せとは何ですか? この問いの答えを考え続けること、これが宿題です。
私は、教員という生き方しか知りませんので、生徒が笑顔になることが、自分の幸せだと思って、生きてきました。みなさんにとって幸せとは何ですか。何を幸せだと信じて、生きる人生を選びますか。答えに辿り着くのはまだまだ先のことかもしれませんが、考えることをやめないでください。今日の「幸せはあなたの心が決める」というお話は、宿題の答えに近づく絶好のヒントになったと思っています。77期生のみなさんへの私からのメッセージは以上です。
最後の最後に、もう一つだけ、とてもとても大事なことを言います。よく聴いて、忘れないようにしてください。
最初に言ったように、人生は山あり谷ありです。魔法の言葉を自分に言いきかせても、やっぱり辛い時、やりきれない思いが溢れて、一歩も動けなくなることがあります。そんな時は、ここに帰ってきてください。三国丘高校はみなさんの「実家」です。
だから、77期生のみなさんに送る最後の一言はこれにします。
「いってらっしゃい」「元気でな」