校長という仕事は、「ごあいさつ」をする機会が非常に多いです。突然ご指名されることもありますので、気が抜けません。少人数のちょっとした会合でも、もし、「ごあいさつ」と言われたら何をどう話そうか...と考えてしまって落ち着きません。式辞(式の時のごあいさつ)ともなればなおさらです。
その上、私には、とてもとても個人的なこだわりがあります。一つの学校で同じごあいさつはしないというこだわりです。このこだわりは、三国丘高校でもやり遂げたいと思っています。三国丘高校に赴任して、今年で5年めですので、年に8回(始業式×3回、終業式×3回、入学式、卒業式)ごあいさつするとして、5年間で40回。全部違うお話をしようと思ったら、大変なことです。
こんな変なこだわりを持ったのは、高校時代のある経験がきっかけです。毎週月曜日の朝に全校生徒がグラウンドに集められて集会をするという学校だったのですが、校長先生のお話しは毎週違っていました。これには仕掛けがあって...その仕掛けというのは、話しはじめの一言でわかります。必ず、「今日の朝刊には...」と言うのです。要するに、校長先生は、学校に来て朝刊を読んで、その場で感じたことを全校生徒の前で話していたんです。今となっては、これはこれで凄いことだと思いますが、できの悪い高校生だった私は、毎週、新聞の話なんかするな!めんどくさい...と思っていました。でも、一つだけ、今でも鮮明に思い出せる話があるんです。
それは、ある新聞のコラムに掲載された、「Next One」という話です。あらすじだけ言うと、喜劇王チャップリンが、晩年、記者に、「あなたの最高傑作は何ですか?」と訊かれたとき、「Next One」と答えたという話です。校長先生がこの話をしてくれた後、どんな言葉を繋いだのか、全く覚えていませんが、今では、大抵はくだらないと思われがちな(全国の校長先生方、すいません)校長の話でも、高校生が覚えていることがあるんだと思えるようになりました。
前置きが長くなりましたが、毎回、三丘生の一人でも良いから...1週間でも良いから...覚えていてほしいと苦心して原稿を書き上げるお話しを読んでください。実話です。

みなさん、今年の夏は、例年にも増して異常な暑さですが、体調を崩していませんか。
熊本県の地震や千葉県の集中豪雨など、自然災害で尊い命が失われるという、やるせないニュースが連日流れています。犠牲になられた方々のご冥福を心からお祈りするとともに、被災地の一日も早い復旧を願っています。
さて、今日は、ある本に関するお話です。新潮文庫の「マイブック」という本を知っていますか?文庫本サイズの本です。
目次には、一月、二月と順に十二月まで書いてあります。あとづけ(奥付)に著者の名前はありません。399ページの本で、最後の2ページを使って、この本の使い方が書いてあります。要約すると、使い方は自由...ということです。それ以上のことは何も書いていません。各ページには、右端に、縦書きで日付と曜日が印刷されています。
(現物を示しながら)これが「マイブック」です。そうです、この本は、文庫本型の日記です。本屋さんで何度か見たことがありますが、関心を持ったことは一度もありませんでした。
「マイブック」をもらったのは今年の3月1日(日)でした。「先生は、ブログをいっぱい書いてるから、面白い日記になるんじゃない?」と煽(おだ)てられ、嬉しくなって書き始めました。つくずく思います。私は単純な人間です。
こんなところで日記を公表するのは恥ずかしいのですが、これを言わないと、話が前に進まないので、しばらく付き合ってください。
3月5日(木)
昨夜、コブラに襲われる夢を見た。マジで怖かった。これが、どんな暗示なのか、明日にはわかるはず。けど、やっぱり怖い。
3月6日(金)
暖かい日。夏物のスーツでも寒くない。結局、コブラの正体は不明。でも、平和な今日はコブラのおかげかも?学校の前のパン屋さんで、美味しいパンをいっぱい買って帰った。
5月27日(水)
末娘23歳の誕生日。社会人1年生の春。ストレスもプレッシャーもあると思うけど、よく頑張っている。不器用なのは遺伝なのでしょうがないけど、どこかで顔の向きを変えてやらなければ...。
6月5日(金)
二件目のバーは裏なんば。心理士は、命を預かる仕事だと教えてもらった。教師も同じだと強く思った。
6月7日(日)
中間祭は最高。これだけ盛り上がっても自制できる三丘生も最高。こんな高校生がいるのか...最高と思うと同時に不思議。これこそ、三国丘の誇りだと、強く思った。
ところが、マイブック117日目の6月22日(月)を境に、私はぱったりと書かなくなりました。理由は、4年ぶりに、アメリカから孫が帰ってくること。孫が大阪にいる間は、全力で遊ぼう!日記は、孫が帰ってからでいいや。と思った...ことにしました。
ややこしい言い方をしたのは、嘘だからです。孫が帰ってくるのを言い訳にして日記をやめたかったというのが本音です。毎日毎日、日記を書くのが、面倒くさくなっていました。
私は、マイブックを本棚の奥に隠しました。
8月3日(月)の朝、娘と孫を空港まで送った直後、一息ついたとき、一番に思い出したのはマイブックのことでした。もう、書かない理由はありません。けど、書きませんでした。書かない毎日の心地よさに慣れてしまっていたのです。
みなさんもありませんか?やめてしまった習慣。毎日、机に向かう習慣というのもあると思いますが、それだけではありません。自分で決めたこと。例えば、寝る前にスマホを見ないとかも習慣です。
あの時心に誓ったのに、今では守らなくなっている約束。もし、あったら、今、私と一緒に復活しませんか?
私は、一足先に、マイブックを毎日書くという、自分との約束、即ち習慣を復活させました。と言っても、昨日の分からですが...。復活の記念と、もう二度と中断しないという誓いを立てるために読み上げます。昨日のマイブック。248ページ、8月18日(火)です。
すぐええかっこするのは、昔から変わってない。悪い癖は治さなあかんと思ってきたけど、今度ばっかりは許す。と言うか、そんな自分を応援したいと思う。日記は、今日から復活。明日の始業式で、三丘生に話してしまったら、引くに引けない。半端な気持ちじゃいられない。自分とは一生の付き合いやから、逃げたくなったら励ましながら行こう。ぼちぼち...な。
いいかげんな自分を、空中から、もう一人の自分が見下ろしているような気分になりました。みなさんにも、それぞれ、もう一人の自分がいます。たまには、話し合ってみてはどうでしょう。厳しすぎるのではなく、甘やかせすぎるのでもなく、自分を一番よく理解している親友として付き合えば、より豊かな人生になると思います。どうでしょう?
今日のお話は、これでおしまいです。2学期が、みなさんにとって、素晴らしい時間になることを願っています。