<式辞>

<卒業式実施>

本日、卒業証書授与式を実施いたしました。本来、卒業証書授与式で皆さんにお伝えしたかった式辞です。一部、ブログ用にしていますが、ご了承ください。

<式辞>

 保護者の皆様、この三年間のご支援、ご協力に感謝申し上げますとともに、お子さまの栄えあるご卒業を心よりお喜び申し上げます。

 さて、第44期卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。3年前の4月8日、入学式で私は皆さんに一生を1日に例えた場合の話をさせて頂きました。憶えているでしょうか。人生を80年とした場合、皆さんが過ごす高校生活は1日に換算すると54分しかなく、入学した際には、1日で言うと朝の4時であるという話をしました。夢と希望に満ちて1日を始めるにあたり、大きな志を抱いて高校生活に臨んで欲しいと、皆さんにお願いをしました。今振り返ってどうだったでしょうか。皆さんにとって充実した、かけがえのない3年間となったでしょうか。今一度、この3年間をしっかりと振り返って、自らが成長した足跡を確認してください。そして、もう一つこの場を借りて皆さんにお願いがあります。それは、この卒業という日を迎えるにあたり、当たり前に通学できたことに感謝して欲しいのです。保護者の皆さまや地域の方々の暖かい支援があったからこそ、今日この日を迎えられたのです。日本では高校へ進学するのが当たり前になっています。しかし、ユニセフの発表では実に3億3000万人の人たちが学習できない環境にあると言います。そのうち約3分の1に当たる1億400万人の子共たちは紛争や自然災害が原因で学ぶことができません。このことにも感謝しながら、是非社会に出た暁には、広い視野で多くの人の学びを見守れる人になってください。

 皆さんが在籍した3年間を振り返るとさまざまなことがありました。日本中で発生している地震。大阪でも大阪北部を震源とする地震がありました。また、日本各地で豪雨による災害がありました。その中で多くの仲間が学ぶ機会を失い、また志半ばにして命を落としたケースもありました。今生かされている私たちにできることを考える機会にもなったはずです。日本中が湧いたラグビーW杯もありました。「ONE TEAM」という言葉は、今でも多くの場で使われています。そんな日本代表チームの歌に、ビクトリーロードがあります。「ビクトリーロード この道 ずっとゆけば 最後は笑える日がくるのさ ビクトリーロード」という歌詞です。皆さんは、この歌詞を聴いて何を感じましたか。最後笑顔で終わるために、しなければならないことが私たちにはあり、それを追いかけ続けることが、明日の笑顔につながる・・・そんなメッセージ性があるような気がします。また、今の生徒会の皆さんは階段上の掲示板に「未来のために今を堪えるのではなく、未来のために今を楽しもう」という掲示もしてくれました。言葉は違えども、共通する心がそこにはあります。確かに多くの災害や苦難がありましたが、今ここを巣立つ皆さんにも、与えられる使命があり、そこに向かってひたむきに取組む気持ちを持って、明日の笑顔をめざして、意気揚々と皆さんの生かされている命が喜ぶ生き方をしてほしと切に願います。

 話しは変わりますが、今年は東京2020オリンピック・パラリンピックが開催されます。世間では、新型コロナウイルスのことばかりが報道されています。そして、その影響で多くの行事が各地で規模の縮小や中止を余儀なくされています。4年に1度開催される世界のスポーツの祭典が、この日本で開催されるまで残り170日程となりました。恐らく一生に一度、自国で開催される夏季オリンピックに出場できるチャンスになるかも知れないと、代表をめざした戦いが繰り広げられています。また、3月12日にはオリンピア市で採火式が行われ、20日には宮城県の航空自衛隊松島基地に到着します。そして、3月26日には福島県でグランドスタートとなり、日本中を巡ります。ここ大阪には4月14日~15日にかけてリレーが行われる予定です。平和の祈りを込めて、7月24日には東京に到着し、東京2020オリンピックが開会します。2011年に発生した東日本大震災から9年の歳月が経ちました。コンセプトは「希望の道を、つなごう」です。道は途絶えることなく、どこまでも繋げることができます。暗く長いトンネルがあったとしても、歩み続けている限り、進み続けている限り、必ず光は見えてきます。これから社会人になる皆さんにとって、未来に繋がる希望の道は、どんな道でしょうか。平坦な一本道でしょうか。それとも、上り下りの激しい坂道でしょうか。平坦な一本道を歩むのもいいですが、さまざまな経験のできる道を自ら進んで欲しいのです。経験は自らを成長させてくれ、未来の道しるべとなります。よく「苦労は買ってでもしろ」といいわれるのも、このことが所以ではないでしょうか。多くの経験をし、生涯歩み続けながら、喜びも悲しみも、苦しみも、寂しさも全てを笑って言えるような人生を送ってください。素晴らしい未来は、すぐそこに開けています。

 結びになりますが、保護者の皆さまに御礼申し上げます。この3年間、時には暖かく、時には厳しくお子様を見守り、また本校の取組みにご理解いただけましたこと、そして何よりも本校に最後まで大切なお子様をお預け頂きましたことに深く感謝申し上げます。誠にありがとうございました。今卒業する皆さんは、誰も見たことのない社会に希望と夢と、大きな誓いを持って飛び出していきます。是非、これからはそんなお子さまの姿をそっと見守ってあげてください。そして、抱くであろう大きな夢の後押しをしてあげてください。卒業生の皆さんには、最後に「自分に克つには、あらゆる事柄を前にして、はじめて自分に克とうとしても、そうやすやすとはできないものだ。ふだんからその心がけを持って、自分に克てるようにしておかなければならない」という言葉を贈ります。

令和2年3月3日

大阪府立島本高等学校 校長 伊藤 義孝