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「協働力」は三国丘高校のキーワード!独自の取組が学会で発表されました〈カリキュラム学会/田中和代首席〉

 今回のブログは、受験校選びに悩んでいる中学生のみなさん!そして保護者のみなさんに是非読んでいただきたい内容です。例えばA高校とB高校の違いは?と尋ねられた時、明確に答えられるでしょうか?例えば、偏差値が違うとか大学進学実績が違うとか、部活動実績が違うとか...違いはいろいろあるでしょうが、それが本質的な違いと言えますか?私は違うと思います。今挙げたのは全部結果だと思うからです。

 ここからは完全に私の私見ですが、大事な高校時代を過ごす学校を選ぶのですから、それらの結果がどのような取組の成果として得られたものなのかを知っておくことはとても重要だと思うのです。取組が何らかの成果に結び付くには、そのための明確な考え方(育成方針)が必要です。

 三国丘高校が生徒を育成する方針は何か?と問われたら、その一つは「協働力」を身につけさせることだと答えます。その「協働力」を育成するためのプログラムが、カリキュラム学会から注目され、この度、本校首席の田中和代先生が発表されました。この発表は、田中先生が学ばれた大学院の関係で実現したものですので、ご本人の許可を得て報告させていただきます。

タイトル:『協働力育成をめざした探究学習カリキュラムの実践 ~メタ認知を用いた全校的な取組み』

①三国丘高校紹介

 本校は文部科学省からSSHSGH、大阪府教育庁からGLHSに指定され、「総合的な探究の時間(本校では学校設定科目Creative Solutionsで代替、以下CS)」において探究学習の指導に力を入れています。

②「協働力」育成カリキュラム構築のきっかけ

 長年の指導の経験から、探究学習の「課題発見→仮説の設定→ 検証・考察→発表」という流れのノウハウはある程度蓄積しましたが、生徒の様子を見ていると、以下のような問題があることに気が付きました。

「優秀な生徒の言うことに迎合する生徒がいる」

「大多数が同じ意見のとき、間違っていると思っても反論できない」

「適当なところでまとめようとする(切磋琢磨しない)」

 そこで、2022年より下図の左側の「探求力の育成」に加えて、右側の「協働力の育成」を掲げ、メタ 認知や心理的安全性、シェアド・リーダーシップ(リーダーシップとフォロワーシップが入れ替わっていくリーダーシップ形態)などの言葉を積極的に授業で使い、生徒に体験してもらいながら、協働力を高めるカリキュラムを実施しています。

③「協働力」を育てる実践紹介

 本校の探究学習における班編成はマルティプルインテリジェンス(MI)をもとにしています。MIとは、  Howard E. Gardnerによって提唱された8種類の知能であり、以下のようなものがあります。

    ・言語的知能  ・論理数学的知能 ・音楽的知能 ・身体運動的知能  ・空間的知能

    ・対人的知能 ・内省的知能    ・博物的(自然的)知能

 本校では、京都教育大学 村上忠幸名誉教授のご指導のもと、生徒それぞれがこの8つの知能をレーダーチャート化し、強みの違った者同士が班を組むようにしています。生徒たちにもそれを伝えていますので、自分の特性を感じたり、他のメンバーの強みを感じながら活動することになります。また、活動中に、お互いの特徴についてエピソードをもとに語り合う「デボノの帽子」と呼ぶリフレクションをおこなったり、年度終わりには本格的なフィードバックを体験してもらいます。これらの活動により、いわゆる「メタ認知」の力(客観的に自分や他人を観察する力)を高めながら協働する力を育みます。

④成果(アンケート分析結果)

 昨年度の2年生の9月と2月におこなったアンケートを分析すると、協働力に必要だと本校が仮定している「メタ認知」「心理的安全性」「シェアド・リーダーシップ」の数値が有意差をもって上昇していることがわかりました。また、本校の探究活動に対する満足度も肯定的意見が約88%と大変高く、好きな者同士の班を組んでいないにもかかわらず、協力しあって探究学習に真摯に取組んでくれていることがわかります。

⑤校内組織

 本校では、SSH,SGHも含めすべての探究学習は「CS委員会」が管轄し、管理職、首席、SSHおよびSGHの研究主任、各教科の代表が集まって指導や評価について意見交換をしています。それにより、学校全体で探究学習の指導に取り組める他、カリキュラムを効率的かつ効果的に実践することができています。また、探究学習に関連のある海外研修を実施したり、大学の先生方にご指導・ご助言をいただきながら指導の改善につなげたりと、本校独自の探究学習の実践につなげることができています。

 以上が発表の要旨です。「協働力」が生徒の何に役立つのか?と思われた方がいらっしゃるかもしれません。しかし、よくよく考えてみれば、新しい時代を切り拓くために必要な力は「協働力」です。個人の力で乗り越えられる課題ばかりではありません。災害を乗り越えるためにも「協働力」が必要です。歴史を振り返ればわかります。人間は「協働力」で数多くの試練を乗り越えてきました。

 高校生にとってもっと身近なことを考えれば、協働してこそ得られる力はたくさんあります。学校行事や部活動はまさに「協働力」が求められる活動ですし、学力も「協働力」によって大きく伸びます。ただただ記憶して点数を上げても真の学力が身についたとは言えないと私は思います。将来の夢も協働的な探究活動から芽生えることがあります。「協働力」は大きな可能性を秘めているのです。このブログを読んでくださった皆さんが、三国丘高校の教育活動の芯になる部分を少しでもご理解いただけたら嬉しいです。