巻四では、「風物」と「私」の部をお送りします。 詠んだのは夏休みでした。その季節の思いがよみがえります。
今宮和歌集2011 巻四
風物
夏おわるせみと白いくも青いうみ また来年とつぶやいてみる かあ
せんぷうきなおしてわかる秋のかぜ せみのこえがきえすずむしの声 かあ
眠いけど暑さに負けて目を覚ますされど我慢だ節電の夏 滝坂昌秀
蝉の声夕陽と共に落ちていく夜の間はどこにいるやら 滝坂昌秀
夏休み毎日早起きする予定けれど眠気に勝てる気がせず もちまろ
蝉の歌山道たどり耳すます水の流れ壁はう井守 晩夏茉莉(ばんかまつり)
ついてくる影で気づいた背後にはモップのような猫が一匹 秋月
夏の夜にひびきわたるはこの瞬間(とき)を、心に刻む暗闇の花 ちょんぷい
私
蝉の声去年までは騒音で今は助かる目覚まし代わり おまめ
目が覚めて太陽の日を見つめては今日という日に感謝をする おまめ
「リスク持ち」鼻で笑えよ嘘つきが信じようとも変わることなし ジョナサン
楽しくて他のことなど見えなくてそれがしあわせ忘れてなくせ ジョナサン
ありふれた記憶をすべて忘れ去る私の目には黒と赤だけ 風雷成也(ぷらなりあ)
流れゆく水の時間と我が記憶その終点こそ湧き出る水源 晩夏茉莉(ばんかまつり)
あこがれた彼のようにはなれなくてため息をつく比べた自分 秋月
泣きながら今を恨んだあの日から未来がこんなに明るいなんて (第18回梅花女子大山川登美子短歌賞に佳作入選) 秋月
暖かい風が私のほをなでてそっと耳うち一人じゃないよ (第25回全国短歌フォーラムin塩尻に秀作賞入選) ちょんぷい
〈 巻五につづく 〉