2011年アーカイブ

『オールドワールド』 (下 3/3)   幌月  ※ (上)(中)を先にお読みください。 ※   ◇◆◇ 地方大会が開始された。相手校は今でも活発に野球が続けられているなかなかの中堅校で、メンバーはベンチ含め20人近くいた。一方こちらは投手は私一人、内野も外野も一人ずつ。交代は許されない、代打もいない。だけど、... 「まずは一勝もらうぞ!絶対だ!」 メンバー全員の勝利への気迫だけは、強...

『オールドワールド』 (中 2/3)   幌月  ※ (上)からお読みください。 ※   ◇◆◇ 次の日の放課後、ホームルームが終わると私はすぐにあいつのいる教室へと駆けた。そのクラスももうホームルームは終わっていて生徒たちは帰宅する者、残って雑談の輪を作る者とたくさんいた。私が探しているそいつもまた、教科書をカバンにいれて帰宅する準備をしていた。「パルシー!」私の声に気づき目をこちらに...

幌月さんによる摩訶不可思議世界。 3回に分けてお送りします。    『オールドワールド』 (上 1/3)   幌月   はるか時代はさかのぼる。遡るという表現もおかしいかも知れない。私たちにとってはここが今生きている時代で、それより昔の世界のことなんて何もしらないからだ。 西暦なんて忘れた。そんなことがあったかなんてことも忘れた。それぐらい時間はたったんだ。 ここは機械と人間の...

梅花・山川登美子短歌賞

国語表現Ⅰの授業から、第十八回梅花・山川登美子短歌賞に応募していた作品のうち、次の二首が佳作入選しました。応募総数1462首中からの入選です。 おめでとうございます。 今年のテーマは「いのち」でした。   泣きながら今を恨んだあの日から未来がこんなに明るいなんて     秋月   ひとしずく葉から滴る悲しみをそっとすくう茶色い手の平     風雷成也(ぷらなりあ)

てのひらの小説 『待機』  都

てのひらの小説第四弾です。 店の前にたたずむ「私」。いったい何を待っているのでしょうか。胸を打つ一編をどうぞ。    待機   都  全く興味のない店の前でさっきからずっと、つまらない顔で突っ立っている。やんわりと風が吹いては、太陽が照りつけ、その度に目を細めるのにもそろそろ飽きてきた。薄手のカーディガンを羽織ってきたが、六月後半なだけあって、じわじわと暑い。人が途切れることなく行き交う...

てのひらの小説 『かみ飛こうき』 鼻子

てのひらの小説第3弾。 紙飛行機に折り込まれた繊細に揺れ動く心情...... ぜひお読みください。   かみ飛こうき  鼻子  紙飛行機を折ってみた。キレイに折られたそれは、飛ばされるはずのものなのに、また広げられる。 進路希望調査書で折られた、紙飛行機の折り目を指でなぞりながら、椎野美歩は悔しさに涙をこぼした。「なんで、こんなの作っちゃったの......」 ただ、涙をこぼしながら、自分...

今宮句集2011 2年4組

今宮句集2011 二年四組 互撰で支持を集めた九句を紹介します。    メール来る期待するけど君でない     芥川龍之介   流れ星切り裂く空は夢の路         星虎  桜舞う全ての始原祝福を          水瓶   青春と気付かず過ごし夢描く        めぐみ   帰り道前から抜ける風ふわり        爽   生きるとは「やってみよう」と思うこと    燈犀   向...

第2回今宮読書会 報告

10月8日土曜日の午後、本校図書室にて、本校教養講座として2回目の読書会をもちました。 司会役の編集子を含めて10名の参加で、1時間余り、宮本輝『泥の河』を語り合いました。 舞台となった昭和橋辺りの街のようす、水上生活者がいた頃の話など、皆さん自分の子供の頃?の記憶がよみがえったようです。 『泥の』の冠がふさわしい、鉄、油、ドブといった大阪的風景に話題が及びました。 作品については、暗く重い作風だ...

てのひらの小説 『輝く町』 ZACK

てのひらの小説をお送りします。 いじめに遭っている少年には、ひとつの楽しみが。その日がやってきます。......    『輝く町』  ZACK  きつい日差しがじわじわと照りつける中で新学期が始まり、早くも一週間が過ぎていた。 滴り落ちる汗をぬぐいながら教室に入ると、すでに教室内にいた生徒数名らがクスクスと笑いながら俺にじろりと視線を向けてきた。 じっとり張り付く嫌な視線を無視して自分の...

今宮句集2011 2年3組

今宮句集2011 二年三組 互撰で票を集めた七句を紹介します。    空と海入道雲が橋渡し           空海(そらうみ)  黄色の点暑い日の中追いかける     けい  桜咲く季節を想う雪の朝          ちかさん  春過ぎて微かに香る初夏の風      木下万平  せんぷうき前で声出すうちゅうじん    いぬ  雨降ればあなたのことを想い出す    なめこ  夏休み宿題沢...

今宮句集2011 2年6組

今宮句集2011 二年六組  2年生現代文の授業では、6組の生徒が自作の句をもって句会を催しました。  互撰で、票を集めた句を紹介します。   秋風に思いはひとつ汗ひかる      大   諦めず前を向いて歩こうよ        まりちゃん   コクコクとねむ気にたえる学生さん   ほくろ   この暑さだけど感じた秋の風      清炭   すくすくと向日葵みたい伸びたいな   薮山虎巻   眠た...

今宮和歌集2011 巻二

今宮和歌集2011 巻二   風物 せみがなく下からねらう猫の目が それでもなくよなつをこいしく   かあ せんぷうきなくしてわかる秋のかぜ せみのこえがきえすずむしのこえ   かあ 引きこもり外へ出ずして風邪を引く夢の中では海へ行こうか   滝坂昌秀 気が付けば頬を流れるこの涙サーカス小屋の明かりに照らされ   俵万智子 目を閉じて蝉の声聞く昼下がりこのけだるさも夏の醍醐味   俵万智...

今宮和歌集2011 巻一

国語表現Ⅰ受講の13人の歌人が短歌を詠みました。何回かに分けて紹介します。 「巻頭」の歌は、互撰で評価の高かった歌です。   今宮和歌集2011 巻一   巻頭七首 明日からいや明後日かその次かどんどん延期やる気スイッチ   もちまろ 神々に祈ってみても効果なし夏の課題と過ごす日々かな   滝坂昌秀 ふと気づく書いてる短歌皆ネガティブこんなとこまで出るか性格   秋月 海行かず...

てのひらの小説 『楠の森』 ピカそ 後篇

  『 楠の森 』 後篇 (2/2)  ピカそ ※ 前篇からお読みください。 ※ 「おいで、綸」 父と娘は手を繋いだ。今度は離れることもなく、お堂の闇の中へと大小の足が同時に踏み入れられた。すると突然背後でバンッと扉が閉じ、闇の中から幾つもの燭が浮き上がった。 暗闇が薄れた室内を見回す少女の隣で父は静かに正座をする。真面目で誠実そうな平凡な横顔を蝋燭に灯された火が照らしている。いつも優し...

てのひらの小説 『楠の森』 ピカそ 前篇

前回予告した、てのひらの小説の第一弾を、前・後篇に分けてお送りします。 お楽しみください。   『 楠の森 』 前篇 (1/2)   ピカそ  その親子は薄暗い雑木林の中を歩いていた。空は明るいはずだというのに、木々は間に夜の闇のような黒を含んでいる。父親の大きい足と娘の小さい足がさくさくと腐葉土を踏み分け、奥へ奥へと進んでいく。 まだ小学生高学年くらいだろうか、小さな娘は着慣れない紅の...

第1回てのひらの小説合評会 報告

書くことが自己満足・自己完結してしまわないように。読んでくれる人に「届く」ように。 今宮高校生で文章表現に関心のある有志が、原稿用紙10枚以内の小説を書いて、合評会を開きました。 作品提出の締め切りは7月15日、作品の回覧は7月26日までにというスケジュール。 9編の作品が参加しました。 8月4日の午前中、執筆者のうち5名が図書室に集まって、全作品について合評会を持ちました。 ひとつひとつの作品に...

怖~い小説

図書委員会発行の『くるぶし』に、「怖い小説特集」が載っています。 「暑い夏、節電対策に冷房いらずになるような怖い小説でも読みませんか? 独断と偏見で選んだ怖い小説を紹介します。」 図書委員さんが選んだ怖い小説をここでも紹介しておきます。   『東京伝説 -閉ざされた街の怖い話』 平山夢明 『ZOO』 乙一 『瓶詰の地獄』 夢野久作 『デンデラ』 佐藤友哉 以下は漫画で...... 『不安...

第1回今宮読書会 報告

本校教養講座のひとつとして、読書会を始めようと、7月9日土曜日の午後、第1回目をもちました。 司会役の私(今宮文芸舎編集子)も含めて、参加者6名全員が読書会は初めて。どうなることか、との心配はどこへやら、みなさん積極的に語り合い、おおいに盛り上がりました。 テキストは大阪を代表する作家・田辺聖子さんの『ジョゼと虎と魚たち』。 自分をジョゼと呼ぶ(呼ばせる)女の子について。世間知らずでアタマでっかち...

第一回今宮高校400文学賞

2年生国語表現Ⅰの授業では、字数の少ない「800字小説」を書きました。 どれも力作揃い。そのなかから、「第一回今宮高校400文学賞」を決定しました。 「400」は、授業教室の番号です。選考委員会は、執筆者全員。つまり、互選で。 栄えある受賞作品2編を紹介します。  「ある猛暑の日の蛙侍」   ピカそ  この日は異様なまでに暑かった。都会ほどではないにせよ、裏の林の油蝉の大合唱が例年にない...

今宮文芸舎発足

今宮高校の文芸を盛んにしよう、と母体となる「今宮文芸舎」を立ち上げました。 よろしくお願いします。           国語科・氏原