2012年アーカイブ

第2回今宮高校読書会 報告 『おやじの味』

12月10日月曜日 13時~14時。 本年度2回目の、生徒による読書会を開きました。 場所は図書室3階。 参加者は編集子を含めて4名。 『おやじの味』は、よしもとばななの短編小説です。 恋愛に破れ、仕事も辞めた女性の主人公が、父の山小屋に居候する話です。 父は家族と別居して、森のなかで一人暮らしをしています。そこでの生活で主人公が変わっていくようすが、たんたんとした筆で描かれています。  ...

今宮読書会 報告 『ポトスライムの舟』

教養講座の今宮読書会。本年度2回目、通算4回目が、11月17日14時30分~、3階図書室にて開かれました。 あいにくの天候でしたが、編集子を含めて6名、奈良からも参加していただいて、和気あいあい、丁々発止? の楽しい時間を過ごしました。   『ポトスライムの舟』の作者、津村記久子さんは、本校の卒業生ということもあって、皆さん地元ならではの空気感に共鳴しつつ読めたようです。   ...

てのひらの小説 『廻る世界』 真幌

※この夏に書かれた作品から、真幌さんのファンタジーをお送りします。   『廻る世界』   真幌 急に女の子が降ってきた。それも、散歩していた私の上に。お母さんから話を聞けば、別段不可解な話でもないらしく、この世界では別の世界から人が来るなんてよくある話だったらしい。いや、もちろん私からしてみれば、人が急に自分の上に降ってくるなんて事は不可解な話以外の何物でもないのだけど。「キナリ」「何」...

てのひら小説合評会 夏の部 報告

本年度も、生徒有志による小説創作と合評会を企画しました。その第1回目、「てのひら小説・夏の部」の合評会を、7月26日木曜日に図書室3階で開きました。今回の参加作品は以下の通りです。 『廻る世界』 真幌『ある男に約一カ月の間に起きたこと』 田中キャノン『これは恋ではない』 都3作品とも400字詰×10枚の分量でした。 合評会の参加者は、真幌、田中キャノン、司書の先生、および編集子の4人。 『廻る世界...

第1回今宮高校読書会 報告 『パレード』

改装成った図書室を使って、生徒による初めての読書会を開きました。7月17日火曜日13時~14時。 参加者は1、2年生の図書委員3名と司書の先生、司会は編集子でした。取り上げたのは、川上弘美の『パレード』。『センセイの鞄』でおなじみのツキコさんが、センセイに思い出を語るという短編です。二人の天狗がいつもわたしのそばにいた子供の頃、クラスのみんなからいじめられるゆう子ちゃんとわたしの交流が話の中心にな...

今宮読書会 報告 『思い出トランプ』

本年度も今宮教養講座のひとつとして「今宮読書会」を企画しました。 6月23日土曜日の午後、本校図書室にて、向田邦子の『思い出トランプ』をとりあげて、本年度第1回の読書会をもちました。通算で第3回目です。 参加者は、司会役の編集子を含めて7名。先ずは収録作品13編のなかでいちばん印象に残ったものをお一人ずつ挙げてもらいました。 『かわうそ』、『だらだら坂』、『はめ殺し窓』、『マンハッタン』、『犬小屋...

※ 前編からお読みください。 『滅亡しなかった日』 ( 後編 )  都  放課後、サユリと由紀に夜ご飯を食べにいかないかと誘われたけど、断った。ここ最近の私の毎日にはうんざりしている。だらだらと時間だけが過ぎるような気がして、でもそれは気がするだけで、結局は同じ速さで時間は進み続け、私はいつも、同じ場所からそれを見ることしかできないのだ。 一人で下駄箱で靴を履き替え、校舎から出る。風が吹いて、スカ...

※都さんの新作を前・後編に分けて掲載します。 地球が滅亡 しなかった日? じっくりお読みください。    『滅亡しなかった日』 ( 前編 )  都    明日、人類が滅亡する、そう思っていた。本当にそう思っていたのだ。  朝目が覚めると見慣れた天井があり、そして見慣れた天井の黒いシミを見つけ私は愕然とする。また今日も朝がやってきてしまった。朝がやってくると私の一日はめまぐるしく...

てのひらの小説 『ワールドリセット』  甘月

※平成24年度も今宮高校の文芸活動を応援ください。 本年度の小説第一弾は、甘月さんのファンタジーワールドです。   『ワールドリセット』  甘月 「お嬢さん、旅人かい?いい宿があるよ。」「いえ、結構です・・・。」知らないおじいさんはにこやかな笑顔をすぐさま消し、来た道を戻って行った。私は気が付くとどこか西洋の街角に居た。 ここはモンスターに支配された国。私が生まれるちょっと前にこの国は今...

平成23年度の記録

2011年度・平成23年度の今宮文芸舎の記録です。リンクは貼っていません。 新年度も今宮高校の文芸活動を盛んにしていきたいと思います。応援のほどよろしくお願いします。 今宮文芸舎 記録2011.4~2012.3 項目別インデックス小説7/14 『電車』 maco7/14 『ある猛暑の日の蛙侍』 ピカそ9/9  『楠の森』 ピカそ10/10 『輝く町』 ZACK10/31 『かみ飛こうき』 鼻子11...

※ 前編からお読みください。   『もう一度、声を』 (後編 2/2)   ボコ 「――ラ、―-ュラ!!」......誰かが呼んだかな?私の名前。こんな楽しい事を邪魔するなんて、なんて不躾な人なんだろ......全く、そんな奴の顔見てみたいよ......「シュ―――ラ!!」うるさいなぁ......さっきよりはっきり聞こえる。邪魔しないでよ......いま、遊んでるんだから。「シュラ!! ...

『遥かなる故郷』につづく、シラルド&タルヴィ・サーガの第二弾をお届けします。今回は前・後編でお楽しみください。   『もう一度、声を』 (前編 1/2)   ボコ 「集え、我が同胞達よ!! 死を恐れるな!! 我等が前に在るのは勝利のみ!!」銀色に輝く剣を携えし少女は高らかに宣誓する。兵たちを先導するために。自らの不安を覆い隠すために。 その世界には戦争が起こっていた。シラルド国とタルヴィ...

今宮和歌集2011 巻四

巻四では、「風物」と「私」の部をお送りします。 詠んだのは夏休みでした。その季節の思いがよみがえります。   今宮和歌集2011 巻四   風物  夏おわるせみと白いくも青いうみ また来年とつぶやいてみる   かあ せんぷうきなおしてわかる秋のかぜ せみのこえがきえすずむしの声   かあ 眠いけど暑さに負けて目を覚ますされど我慢だ節電の夏   滝坂昌秀 蝉の声夕陽と共に落ちてい...

てのひらの小説 『遥かなる故郷』 ボコ

ボコさんの放つファンタジー・ワールドをお楽しみください。   『遥かなる故郷』   ボコ 俺が住むシラルド国と隣国タルヴィ国。二つの国の二人の王の醜い争い。それはお互いの国全体を巻き込んで、数十年もの長い戦いを続けた。大地が焼け、生命は死に絶えた。ようやく戦いを終えた頃には、何もかもが消えていた。もちろん俺の全ても灰へと消えたのだ。 俺の故郷はシラルド国の辺境に位置する小さな村だった。な...

今宮和歌集2011 巻三

九月に掲載した「今宮和歌集」2011年度版の続きをどうぞ。   今宮和歌集2011 巻三     巻頭五首  むらさきの星がきらめく坂道に一人佇むたんぽぽの種   風雷成也(ぷらなりあ) いたんでるかみのけをみておもいだす私のかみをほめたあなたを   かあ 揚げ足をとりあい野次る大人達これが国会?聞いて呆れる (第25回全国短歌フォーラムin塩尻に秀作賞入選)  俵万...

てのひらの小説 『シュガーデイ』 乾

てのひらの小説の第二回合評会に参加した作品を採り上げていきます。その第一弾、『シュガーデイ』の登場です。   『シュガーデイ』   乾 「あー、テステス。聞こえているかね、スイート街(タウン)の諸君」 歩道のスピーカーから聞こえてきた声に、道を歩いていた人々が一斉に足を止めた。お祭りごとや非常時のとき以外使われるはずのないスピーカー。そこから聞こえる人の声に人々が首を傾げていると、今度は...

第12回若山牧水青春短歌大賞

延岡市主催の若山牧水青春短歌大賞の「高校生部門」に、次の歌が佳作入選しました。 おめでとうございます。   背伸びして網戸にとまった蝉の腹見つめて終わる十七の夏    俵万智子

全国短歌フォーラムin塩尻「学生の部」

国語表現Ⅰの授業で送った短歌のうちから、長野県塩尻市が主催する「全国短歌フォーラムin塩尻」の「学生の部」に、秀作賞として次の2首が入選しました。 全投稿数1万545首からの入選です。 おめでとうございました。   揚げ足をとりあい野次る大人達これが国会?聞いてあきれる     俵万智子   暖かい風が私のほをなででそっと耳打ち一人じゃないよ     ちょんぷい

てのひらの小説 『浮遊』(下) 都

『浮遊』 (下 3/3)  都  ※ (上)(中)からお読みください。 ※  私の家の近くの河原に着いた途端藤川さんは石でできたタイルの上に仰向けに寝転がり、大きく息を吐く。私もあとに続いて藤川さんの横に寝転がり、空を見る。まだ昼過ぎで日が強く、まるでトイレの便座に座り、裸電球を眺めているみたいだと思った。ふと、予備校のことが頭によぎる。予備校に行かなくてはいけない。大学に合格して、私は一刻も早く...

てのひらの小説 『浮遊』(中) 都

『浮遊』 (中 2/3)  都  ※ (上)からお読みください。 ※   私の家の周辺で一番大きい本屋の前で私は藤川さんを待った。藤川さんは二分遅れて謝りながらやってきた。今朝スーパーで会ったときと寸分変わらない姿で現れた藤川さんに、私はやっぱり違和感を感じる他なかった。「ファミレスでいいよね」  藤川さんは私を見ながら聞く。私は頷く。本屋から五分程歩いて着いたのは、私が予想し...

てのひらの小説 『浮遊』(上) 都

 昨年、『待機』を寄せてくれた都さんの新作30枚を、3回に分けてお送りします。 浮遊、とは?...... 『浮遊』 (上 1/3)  都 「あたし、少しだけ浮いてるの」 同じ中学校に通っていた藤川さんに、十九歳になったばかりの春、近所のスーパーでばったり会って、しばらく立ち話をした後いきなりそう言われたとき、私はとりあえず藤川さんの足元をよく見た。「う、浮いてないよ、多分」 あまりに説得力のある言...

第2回てのひらの小説合評会 報告

今年もよろしくお願いします。 今宮文芸舎主催の「てのひらの小説」合評会を、本日1月5日に開きました。 昨年末提出締め切りで、原稿用紙換算5枚~10枚の小説を「よかったところ」、「わからなかったところ」、「こうすればよくなるのでは」の項目で各自の作品について語り合いました。 今回の作品数は総数5編。 ファンタジー系が4編。 リアリズム系が1編。 4人の作者プラス司会者(文芸舎主人)の計5人が参加。 ...