第2回今宮高校読書会 報告 『おやじの味』

12月10日月曜日 13時~14時。 本年度2回目の、生徒による読書会を開きました。

場所は図書室3階。 参加者は編集子を含めて4名。

『おやじの味』は、よしもとばななの短編小説です。

恋愛に破れ、仕事も辞めた女性の主人公が、父の山小屋に居候する話です。

父は家族と別居して、森のなかで一人暮らしをしています。そこでの生活で主人公が変わっていくようすが、たんたんとした筆で描かれています。

 

胸にじんわりと響く話で、自分でも普通に抱いている気持ちが書かれていて、共感できる。

最初の辺りの話が激しいが、それがあるので主人公のその後の行動や気持ちの変化がよくわかる。

森での暮らしが、職場の「高橋さん」や「清水くん」の世界から離れていくきっかけとなっている。友達からの手紙を読んで違和感を覚えるところもよくわかった。

父が森で暮らすのは、生活は不便だが、自分がしなければいけないことをするだけなので、精神的にはいいことだ。

父は主人公の数歩前を歩いているのではないか。

母が主人公を森へやったのは、父を監視するというのは表向きであって、主人公への思いやりからだろう。父と母は安定した距離感を保っているようだ。

自分を変えるために環境を変えるというのは大切なことかもしれない。

女の子と父親の関係だから成立する話であって、これが男の子と母親ならこうはならないだろう。

主人公は確かに変わったが、これは森にいるあいだだけで、町の生活に戻れば、果たしてどうなるのだろうか?

 

など、さまざまな感想が活発に話し合われました。 意見を交わすことで理解が深まるところもありました。

みなさんはこの作品の最後の一文、

「生きていることに意味をもたせようとするなんて、そんな貧しくてみにくいことは、もう一生よそう」

というところに共感を覚えていました。