今宮読書会 報告 『ポトスライムの舟』

教養講座の今宮読書会。本年度2回目、通算4回目が、11月17日14時30分~、3階図書室にて開かれました。

あいにくの天候でしたが、編集子を含めて6名、奈良からも参加していただいて、和気あいあい、丁々発止? の楽しい時間を過ごしました。

 

『ポトスライムの舟』の作者、津村記久子さんは、本校の卒業生ということもあって、皆さん地元ならではの空気感に共鳴しつつ読めたようです。

 

登場人物が女ばかり、主人公のナガセやヨシカは草食系、その日常を淡々と、乾いた表現で綴っている。

ヨシカ、ナガセ、母親の距離感が良い。

恵那ちゃんは健気で大人にも気を使っている。主人公ナガセの子供の頃と重なっているのか。

など、登場人物の描写の巧さが話題になりました。

 

ナガセ、ヨシカなど主要人物をカタカナ表記にするのはなぜか。 工場のラインの一部と同化するように、考えるのを止める存在となっている。 周囲の、縛られて生きている人物とは違う存在だ。そうやって自分を守らざるをえない世代ではないか。

という話から、作者の世代、非正規雇用の世代について。

さらに、その親の世代、団塊の世代について。 と話題は広がっていきました。

 

小説冒頭の2枚のポスターに暗示されるように、「うつ」と「クルージング」のふたつの世界を心の奥に抱える傷ついた主人公が、恵那ちゃんを始めとする人物たちとの生活で、再生する物語、と読んで、希望あるラストに感動する意見が多くありました。