夢十夜「第十一夜」 その五

20期生 1年。3編をお送りします。

 

『第十一夜』 ゆうやけこやけ

 

 

こんな夢を見た。

僕はいつもどおりエサをとるために海に出かけた。そして、エサをとっている内に、いつもより深いところに出た。ここは、僕たちイワシの天敵の「サメ」という生物がいると聞いたことがある。お父さんは行ってはいけないと言っていたが、僕は好奇心に負けて、さらに奥に行ってみることにした。そこには、見たこともないくらい大きな体、そして鋭いギザギザの歯をした魚がいたのだ。その魚がこっちを向いたときその魚が、いただきます、と言った。あれ、この魚は今から何を食べるのだろう、と思った。しかし、その魚の次の行動を見て、納得した。その魚が大きく口を開け、こっちに向かって泳いできたのだ。そして気づいた。その魚がサメということと、自分の命が危ないことを。ああ、弟やお父さん達は大丈夫かな、と思いながらゆっくり目を閉じた。

 

 

 

『第十一夜』 Lily

 

 こんな夢を見た。

 夜空に輝くの星空の下、一人の少女が座っていた。私がどうしたのと声をかけると彼女は「家出しちゃったの」と言った。私は何も聞かず、ただ、そうなのと言って彼女の横に座った。すると、彼女はおもむろに話し出した。「私、本当はお母さんのこと大好きなんだ。いつも仲良いの。ただ、今日はお母さんの誕生日だから鏡をあげたの。そしたらそれを妹が割っちゃって。腹が立って妹のこと殴ったらお母さんが私を怒ったの。それで嫌になって家出したんだ。きっとあの鏡はもう捨てられちゃったね。」私はその話になんだか聞き覚えがあった。すると目が覚め、気づくと自分の部屋だった。

 ある日、母の部屋へ行くと、あの日妹が割った鏡が修理されて大切に飾られてあった。私は涙が止まらなかった。

 

 

 

『第十一夜』 キャロリング

 

 こんな夢を見た。

 私は居間にいる。窓から外を見ると、日光がサンサンと降りそそいでいる。私の目の前にあるテレビの画面には、番組ではなく、一人の男の子が映っている。私がよく知っているアナタ。画面に映るアナタは、コッチを見て笑いかけてくる。空は快晴だ。

 次の日も、その次の日も、テレビに映るアナタはなんだか輝いて見えて、空もどんどん透きとおっていく。

 そのまた次の日、なんとなく見た今日の日付は土曜日。テレビにアナタは映っていなくて、空もくもってきた。

 次の日はさらにくもって、ドンヨリしている。なんだか時間が流れるのが遅い。明日はまだかな、まだかな、まだかな・・・・・・。

 次の日、テレビの奥のほうにアナタが映っていて、またあの笑顔で「おはよう」って話しかけてきた。

 空は嘘のように晴れた。

 

 

   〈 了 〉  「その六」につづく......