フィリピンリーダーシップ研修5日め(8月7日)の様子が、メールで送られてきました。ここに書かれていることも三国丘高校のフィリピンリーダーシップ研修ならではの(というか、三国丘だからできる)メニューです。じっくり読んでみてください。
8月7日 研修5日目
午前中はアジア開発銀行(ADB)に行きました。
ADBというのは、日本が各国に呼びかけて1966年に設立された国際金融機関です。主にアジア太平洋の貧困を撲滅することを目的とした機関で最大の出資国は日本とアメリカ合衆国で、歴代の総裁は日本人が担っています。
最初は中庭に集合写真を撮り、ADBのイントロダクションがありました。
まずお話してくださったのは日本人スタッフのオオイシさんです。主に民間企業に対する融資を担当している方です。イントロダクションの後は質問の時間が取られ、生徒たちはADBに関することや、オオイシさんの経歴に関しての説明をしていました。オオイシさん自身は、大学は工学部の出身とのことですが、在学中に金融に興味を持たれ、金融機関に就職されたそうです。その後、ある仕事がきっかけでADBのスタッフと一緒に仕事をすることがあり、その際、ADBの方から「うちに来ないか?」と誘われ、現在に至るということでした。
その後は、日本人スタッフの方が3名来てくださいました。
1人目のケイチョウさんは日本の金融機関で勤めてから、世界銀行で長年勤務され、そしてADBのほうに来られました。今日の機会の前に本校のことを調べてきてくださり、本校が100年を越す伝統校であること、「三丘スピリット」や「グローバルリーダーを育成する」という本校のスクールミッションにたいへん感心したと、学校のことを褒めてくださり、教諭として勤めている私も嬉しくなりました。そのなかでご自分の経歴を話してくださり、高校生に今日は以下のことを伝えたいとお話してくださいました。
「成長の壁は自分自身」「他人と比べないこと」「今日の自分は昨日の自分に勝とう」「80%で大丈夫だと思うことにしよう」「人と同じことをしては埋もれてしまう。人と違うことをするようにしよう」「グローバルというのは海外で働いたり、暮らしたりすることではない。ダイバーシティ(多様性)を大切にすること。多様な価値観や考え方があるということを受け入れ、そうした人たちを自分たちの中に入れること(インクルージョン)。それがグローバルということ。」国際機関で働かれた経歴からくるたいへん説得力のある言葉でした。
次にお話をしてくださったのはヤマカワさんです。ヤマカワさんは東南アジアの教育プロジェクトを担当しており、主に各国の中学校や高校の質を向上させることを目的としています。日本では東京であろうと地方であろうと受けられる教育の質にはほとんど変わりはありませんが、東南アジアの国々では、大都市と地方では質が全く異なるということでした。ヤマカワさんがそういった教育開発に関わるようになったのは、大学生の時にゼミの研修でカンボジアに行ったことがきっかけだとのことでした。カンボジアに滞在していたとき、友人がバイク事故に遭い、当時首都のビエンチャンで一番大きい病院に友人が運ばれました。ところが病院のスタッフはヤマカワさんに脱脂綿や消毒液を薬局で買ってくるように指示してきたのでした。最も大きい病院でも、カンボジアでは病院内に必要な物資が常備されておらず、これはおかしいことではないかと思ったことがきっかけで教育開発の仕事に関わることになったとのことです。
最後に3人目のアオキさんは今のお仕事をしている原体験についてお話をしてくださいました。アオキさんは中学生のころ、シンガポールの日本人学校に通っていました。中学3年生のときに修学旅行で行ったタイのバンコクで、バスを降りると、自分たちの周りをあまり自分と年が変わらない子供たちがおみやげを買ってくれと取り囲んできたそうです。どうやら子供たちはそのおみやげを売らないと夕食にありつけないということで、アオキさんはそのときに、自分は日本という恵まれた先進国の生まれであり、世界には同じ年齢なのに自分と全く違う境遇の子どもたちがいるということを痛感したそうです。そういった体験で感じたことを胸に秘めながら、アジア開発銀行で働いているというお話をしてくださいました。
短い時間でしたが、本日4名の日本の方がお話してくださった内容はどれも興味深く、少しでも生徒たちの記憶に残って、何かを感じ取ってくれればと思います。いつか、今回の研修に参加してくれた誰かが、「あのフィリピン研修があったから、今の私はこういうことをしています」ということを誰かに話してくれたら、私は教員という仕事をしている身として、幸せなことなのだろうと思っています。