読書のすすめ9 竜馬がゆく

 夏休みですので、長編小説を紹介します。"竜馬がゆく"は私の愛読書です。坂本龍馬は、私がもっとも好きな歴史上の人物で、高知、長崎、鹿児島と、竜馬ゆかりの地や銅像、記念館周りを、かつて何度か一人旅で楽しみました。おっかけですね。

 竜馬は幕末の維新回天のキーパーソンで、薩長同盟、大政奉還、五箇条の御誓文等に、大きな働きをした人物だとされています。また、創設した海援隊は日本海軍に引き継がれ、海軍の祖ともいわれることがありますし、また、彼が立ち上げ、司馬遼太郎さんが日本初の商社と呼ぶ "亀山社中"は、海援隊を経て岩崎弥太郎の三菱財閥に引き継がれ発展したと言われています。亀山社中の本社は、長崎湾を見渡す急斜面にありました。往時は、そこから、多くの黒船で溢れていた当時の世界への出発口である長崎湾が見渡せたことでしょう。

 そういった評価は別として、坂本竜馬の生涯をみると、活躍した時間が非常に短い。京都で暗殺される前の2~3年の活躍がすさまじいですが、それまでは、北辰一刀流の江戸桶町の千葉道場で重きをなしてはいたものの、立場は土佐藩を脱藩した一介の浪人で、収入も公式な後ろ盾もほとんどない。また、幼いころは私塾の師匠がさじを投げたほど成績が悪かった。だけど、自由かつ本質をつく発想と吸収力、社会を発展させるための思想とその利他的な行動力で人望を集め、最後には、薩摩藩西郷隆盛と長州藩桂小五郎を心酔させ、維新回天の原動力である薩長同盟締結を実現させた。 活躍したのは、最後の数年。それまでは、ずううと、蓄え続けた。いつ死ぬかわからない状況に自らを追い込み、敗れても前のめりで死ねればいいとの信念で生き抜いた。なんともかっこいい吹っ切れた30年そこそこの短いが輝いた人生だと感嘆します。

 まもなくリオデジャネイロ・オリンピックが始まります。選手は、一瞬の輝きのために何年間も努力を続けたのだと思います。勉強も部活も同じかもしれません。蓄え続けるのは、時に厳しいけれど、結果はほんの一瞬で終わってしまうけれど、そのプロセスが実は美しいのだと思い起こさせてくれる。"竜馬がゆく"は、そんな気持ちを抱かせてくれる一冊です。

 文庫本で全8巻という長編のため、しきいは高いかもしれませんが、司馬遼太郎さんのの代表作です。ゆっくり読んではいかがでしょうか?

 なお、坂本竜馬は、今宮高校と少しだけ関係があります。昨年度のNHK大河ドラマで坂本竜馬役をされた俳優の伊原剛志さんは、今宮高校の卒業生なのです。

では、最後に 『onとoffを意識して』 頑張れ 今高生!