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分科会A「基礎的環境整備と合理的配慮についての本校での取り組み」

実践交流会で実施された分科会について報告します。


分科会Aでは、「基礎的環境整備と合理的配慮についての本校での取り組み」について各学部より報告を行いました。なお、昨年の実践交流会の分科会で「インクルーシブ教育と合理的配慮」という題で講演していただいた大和大学教育学部 井上和久先生をアドバイザーとして迎えて分科会が開かれました。


初めに中学部の教員の園田が、職員室横に貼られている「平成28年4月1日から施行!『障害者差別解消法』」(*正式名称は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」です。)ポスターを提示し、研修の目的について次のように言いました。


「この法律では、学校のような行政機関において、『不当な差別的取扱い』をしてはならない、『合理的配慮の提供』をしなければならないことが定められました。今後、学校現場でこの法律の観点からも支援をして行く必要があります。そこで、今日は、本校ですでに行われている支援を報告し、この法律の観点に照らしてどうかということから、今後の支援のあり方を一緒に考えていきたいと思います。」


続いて各学部の事例についての発表がありました。いくつか紹介します。

■「小学部における基礎的環境整備と合理的配慮」

①「朝のマラソン」--- 1日の集団生活のスタートのリズム作り。すべての子どもたちの身体と心の成長を促すために行なわれています。

・運動場における基礎的環境整備として学部で走路を分けたり横断する場所を確保したりしています。

・マラソンにおける合理的配慮として、個別に走る姿勢や身体の使い方の指導をしたり体調管理が難しい児童に気候や天候に応じた指導を行ったり、走ることが苦手な子どもへの対応としてグッズで工夫したりしています。


②「クラスの教室でのとりくみ」

・基礎的環境整備として話をしている人に集中できるように、どこを見ていいかわかるように、基本必要なものことのみ掲示し、学年や場面が変わっても理解できるように、どの学年、どのクラスでも共通の視覚支援教材を使用している。一日の流れ・週予定・月予定・給食メニューなど。

・合理的配慮として一人でも特別に環境整備が必要な子どもがいれば環境を整えます。

・タイマーを使用する・集中できない生徒にはついたてを使用する・自分の場所がわかるようにマークを決める・はみがきをいつまでも続けてしまう児童には、仕上げの絵を挿入する・身体的機能への合理的配慮として椅子を改良するなどです。

■「中学部における基礎的環境整備と合理的配慮」

①様式を変える

・日記、バスケットボール等生徒に応じたものを用意する。

・ドリルの様式を変える→計算問題のプリントは1枚に数問あるのが普通だが、苦手で計算をやりたくない生徒に1枚に1問だけのプリントを渡してできたら次のプリントを渡すというやり方に変えたところ集中してやるようになった。


②見本を示す

・出来上がったものを示して説明するだけでなく、各々の工程を見せながら一緒に行う"見本の動画"様式を採用しました。


③手がかり 

・教室に場所のカードを用意する→使用して自分の行きたい場所を伝えられるようになった。

・時間割カードを色分けする→自分のグループの場所を間違わなくなった。

・ロッカーの中に仕分けのために仕切りやケースを用意する→自分で整理できるようになった。

■「高等部における基礎的環境整備と合理的配慮」

<環境整備として>

・カリキュラム整備---高等部は2年生より2つのコース、a)生活自立コース・b)職業自立コースから選択します。

・教室整備---掲示物は極力減らしテーマごとに掲示・生徒ごとの時間割をロッカーに貼る

・就労を意識した整備---タイムカード導入・実習日を週2日設定・本格的な清掃器具の利用・作業着の着用・清掃や印刷業務の実習などをしています。

・iPadを活用---高等部の生徒全員が購入し、メンテナンスを含めた管理を学校が行い活用します。


<合理的配慮の観点から>

・掲示物では、破れやすいプリントはラミネートをかける・マグネットは口に入らないものを利用するなどしています。

・iPadは、「授業で生徒の習熟度別に使用する」・「実習先の情報や行き方を検索する」・「OTやSTに指導を受けた内容を記録し後日振り返る」などの活用をしています。


報告の後は、出席者同士の交流ということで、質疑応答を行いました。地域の参加者からは、

・「本校の様々な取り組みを知りことがしりとても参考になった。」

・「法律の観点がよくわかった。自分の指導についても振り返ってみたい。」

・「地域では、まだまだ法律について知っている人が少ない。法律の意義を吹田支援とも協力して、広めていけたら、、、。」


と、言ったようなご意見が出ました。


また、地域の福祉・教育の実情についての情報交換も行いました。


質疑応答の後、井上先生から、「昨年1月に分科会でお話しさせていただいて、1年たたないうちに実践報告ができるようになっていることに感動しています。今までにやってきたことの質を高めていってください。地域の方々ともわれわれ研究するものとも協力して行っていきましょう。」というお言葉をいただき、分科会を終了しました。