Award Reward Forward

お天気の神様からの祝福を受け、第75回卒業証書授与式を行いました。

在校生の言葉、卒業生の言葉、保護者代表のお言葉、そして学年主任の言葉。

コロナウイルス感染症との戦い、その厳しい状況下で75期生の対応する姿に心揺さぶられた76期生の思いが、さまざまな場面で75期生自身の心の置き所、物事への向き合い方が卒業生代表から語られました。閉式後には、保護者として不自由な状況の中、自主・自律を重んじる校風の中でがんばる子ども、それを見守る教員への感謝のお気持ち、そしてこの状況だからこそ、できることを見つけて新しいことにチャレンジしようとしたという学年主任からのメッセージがそれぞれ伝えられました。

 0から1を作ること、常にそれを求められた3年間。卒業生も、在校生も、保護者の皆さまや、学年団の先生方にとっても今日までの歩みが「茨」の道であったからこそ、到達したたくさんの果実をつけた「木」のしなやかさとたくましさの眞の価値がわかり、その魅力について語り合える。卒業生の皆さん、これからは陸路ではなく海路です。みなさんが荒波を乗り越えて、それぞれの船旅が実りあるものになることを願っています!                                 (卒業生による作詞・作曲された卒業歌は「茨木高校の近況ブログをご覧ください」

以下に本日の式辞を掲載いたします。

式  辞

太陽が与えてくれる光や熱に春の訪れを感じる今日の佳き日に、大阪府立茨木高等学校 第七十五回卒業証書授与式を保護者の皆さまやご家族の方をお迎えして挙行できますことは、教職員一同この上もない喜びであります。

 はじめに、公私ご多用の中ご臨席賜りました、久敬会、PTA・後援会の各ご代表のご来賓の方々に高いところからではございますが、心からお礼申し上げます。誠にありがとうございます。皆様方には、平素より本校教育に深いご理解と多大なご支援をいただいておりますことに、この場をお借りして改めてお礼申し上げます。

 ただ今、卒業証書を授与した三百十四名の七十五期生の皆さん、卒業おめでとうございます。激動の3年間でした。合格発表後すぐに2か月の休校。十分に距離をとった上で生徒だけで迎えた入学式。部活動が再開するも感染状況により、大会の中止、延期、縮小。大会開催の中での休校による棄権。体育祭の中止、実施できた行事も外部の方をお招きできなかったり、縮小等の計画を変更した上での実施を余儀なくされました。日常生活では、マスクの常時着用、黙食、面と向かうこと、触れ合うこと、歌うこと、調理すること、ペアワークもグループワークも人と触れ合うことはすべて避けなければなりませんでした。

 1年次の体育祭は中止、2年次は部分実施、その中で迎えた今年の体育祭。フルサイズの体育祭は知らないまま、映像や先輩方の言葉による引継ぎを受け準備、実施へと走り出しました。多くの人が、それぞれの部所、場所でリーダーとなり、フォロワーとなり、それぞれのパートで最大限力を発揮できるよう、お互いがお互いの存在を認め合い、確かめあって役割を果たしました。一日の延期を経て、グランドコンディションの整わない中での開催。不安要素を抱えながら総団長による選手宣誓、懸命に水抜きをしてくれた人の思いを受け止めての全力疾走、それを応援する人たち、マスゲーム、応援団、マスコット、それぞれのパフォーマンスで示される思いがあふれていました。すべてを終え、閉会式。Awardは選ばれた団へ、Rewardはすべての参加者へ。なぜ、そう感じたのか。それは、校門を出て駅へ向かう桜通りから見た光景が示してくれたことです。各団の長や係の人たちが団のメンバーに話をしている姿に出くわしたのです。語る人、まっすぐ見つめ、耳を傾ける人。自分たちが描いたゴールへ到達したリーダーである3年生、どんな状況の中でも0から1を生み出し続けた経験は今後の人生のどこかのポイントで皆さんを下支えする財産となることでしょう。75期生が得られなかったモデルを手に入れた1・2年生の心に残したものは計り知れない大きな力になるでしょう。

75期生の皆さん、ありがとう。この3年間、人との触れ合いを禁じ、言葉を交わすことを制限する指示、行事を中止する、延期することを決断する毎日に、教育の「死」すら覚悟するくらい、心がすさんでいました。あなたたちが、懸命に仲間と言葉を交わし、何かを創り出そうとする姿に勇気をもらい、前を向くことができました。

 75期生の皆さん、ありがとう。あなたたちの言葉や佇まいはいつも私の心を射抜きました。朝、生徒玄関に立つ私に体をこちらに向けて笑顔で挨拶してくれました。ワールドカップの勝利の時には「やりましたよ」と喜びを共有してくれました。ラフレシア発行の次の日「読みました。想いが届きました。全力を尽くします。」授業見学。体育ではフライングディスクを「校長先生行きますよ。」と投げ、ダブルダッチでは「校長先生跳びましょう。」と縄を回してくれる。国語の授業見学では「感想をどうぞ、そして次回はコラボ授業してくださいね。」というリクエストまでしてくれました。  入試一週間前くらいから校長室を訪れてくれた皆さん。「がんばってきます。行ってきます。また、帰ってきますね。」という一言を残して部屋を後にしました。ものすごく緊張しながら、でも絶対に言わなきゃという面持ちで「寒い日も、雨の日も、挨拶をしてくださってありがとうございました。」投げかけてくれた言葉は、どれも、私に言わなくても日常生活に影響のなかった言葉です。どの言葉も私の心に届いた言葉です。なぜ届いたのでしょう。それは人を思うことから発せられた言葉だからです。その数々の言葉の中でもひと際心を揺さぶられたのは、体育祭でマスコットにちなんだカードを作成し、そのカードに所属する団のメンバー全員にメッセージを書いて渡したというエピソードでした。それは、感謝する心が芽生え、それを伝えようと思い、その方法を模索し、労力がどんなにかかろうと、どんなに時間を費やそうと相手に自分の思いを伝えるという強い意志と粘り強く行動する力から生まれたものです。カードを受け取った一人ひとりの胸に届いたエネルギーは計り知れません。

75期生の皆さんにお願いがあります。それは思いのこもった言葉を人に届け続けてほしいということです。「いう」という漢字を2つ書いてください。人を表す人偏と結びついたとき、「言う・云う」は伝える、伝わる。信じるという言葉になります。人に伝えたい想いを持ち、その想いを信じてもらう。このシンプルな営みが人に勇気を与え、力を授けていくのです。そのことを今年1年かけて皆さんから教わりました。 人に伝えたい想いが、相手のためになるかどうか。そのことを確かめるためにどうか耳を澄まして、心を研ぎ澄ませて、自分の心の中にある「音」を聞いてください。心に下支えされた「音」―「意」と心に下支えされた「今」―「念」と何度も向き合う中で何度も同じ思いに至るならば、それは必ず皆さんが、届けなければならない「想い」、やらなければならない「意味・意義」のあることなのです。皆さんの心に宿る「音」が世の中に響き渡り、素晴らしい世界を築き上げてくれることを心から願っています。 最後に、保護者の皆さま、この三年間、送り出すことも叶わなかった最初の2か月、感染の脅威。保護者の皆様にお越しいただけない中での行事の実施。不安なお子様を、叱咤激励される毎日は想像を絶する厳しさであったと推察いたします。式辞内で述べましたようにお祝いの言葉を述べるところをほぼ感謝の言葉で埋め尽くしてしまうほどお子さまの姿に勇気と力をいただきました。お子様を支え、健やかに育まれてきたことに対しまして敬意を表するとともに、これまでの本校の教育活動にご協力、ご支援いただきましたことに心より感謝申し上げ、お預かりしたお子さまをご家庭にお返しいたします。本校にお子様をお預けくださりありがとうございました。お子さまのご卒業、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。                                        75期生の皆さん、最後にもう一度、ありがとう。出会えたことに心から感謝しています。心に下支えされた音に耳を傾け、前へ、前へ歩を進めてくれることを心より願い私の式辞といたします。

 令和五年三月一日

               大阪府立茨木高等学校長

                                  高江洲 良昌

最後に日付を噛んでしまいました。痛恨のミスです。           前向いてがんばろう!