Grateful! Great Graduates! GGG(1)

「40数年の間にこのクリスパーの発見をはじめとして、多くの発見に何度も興奮する研究者人生を送ることができました。その原点は茨木高校時代の生物IIの教科書に掲載されていたDNA複製の模式図であったように思います。」

九州大学大学院 農学研究院 生命機能科学部門 生物機能分子化学講座 生物化学分野 教授 高28期 石野良純教授よりオータムセミナー前にいただいたメッセージにお書きいただいたお言葉です。オータムセミナーは後期初日、2年生対象に、「課題研究」に向けて、自ら課題を見つけそれを解決するということと、研究に対する姿勢を学ぶことを目的として、教授をされている卒業生より基調講演をしていただく企画です。

対面開催を強く願っておられた先生は76期生を前にし、30年前に発見したクリスパー(CRISPR)が、多くの研究者の貢献によって約20年後に、原核生物の免疫機能を担うことが解明され、2012年に、その原理を利用した画期的なゲノム編集技術の開発に成功した二人の女性研究者に2020年のノーベル化学賞が贈られた事実をお伝えくださいました。そして茨高生活を振り返りながら同期生の方のお話や進路選択にまつわるお話をしてくださり、今の選択科目や希望の大学の学部で道を決めてしまうのではなく、たくさんの可能性や選択肢、進むべき道があるので学びながら決めていくこと、新しく学ぶことを恐れないこと、自分の苦手科目でできが悪いからなどという理由で、自分の興味のある分野をやってみないのは非常にもったいないことだと76期生が自分事として捉えやすいように、自らが悩んだことと紐づけながら語ってくださいました。

多くの勇気、力、選択肢を授けられた76期生にご講演に関する質問の機会をいただき、質問者を選び、マイクを手渡す作業をしているとき、石野先生は壇上から降りてこられました。一人ひとりの質問に丁寧にお答えいただく中で、ある生徒の質問に対して、「いい質問だね。鋭いね。(少し時間をとって)それはわかりません。不思議ですね。」とお答えになりました。壇上から急いで降りられ、同じフロアで生徒の質問にお答えになる姿勢(少しでも近くでお話を聞かないと対面でやっている意味がないからとおっしゃっておられました)、わからないことをわからないとお示しいただく姿勢を拝見し、あらためて茨木高校での学び、そしてそこで培われた豊かな心の世界の広さと奥深さが、学問を追求する精神を育み、人に寄り添う心を宿らせるのだということを実感させていただきました。2年生にとっては後期初日が茨木での高校生活の折り返し地点。これからますます様々なことに興味・関心を持ち、不思議なことに満たされる日々を送ってほしいと思います。石野先生のご経験、お人柄、ご教示いただけるすべてのことが、この秋が実り多い収穫の秋になることを告げていただけたように思います。お忙しい中、お時間をいただき、熱い思いを授けていただきありがとうございました。