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絵に描いた餅が棚から落ちてくるまで!? Road - broad - abroad 3

  1999年4月1日、岩手、福島、埼玉、群馬、神奈川、横浜、新潟、富山、三重、大阪、岡山、広島、島根、高知、福岡、北九州の14の府県、2つの都市から選ばれた22人が東京外国語大学留学生センターで一堂に会した。イギリス、フランス、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、ロシア、韓国で1999年8月より2001年3月まで日本語を教えるREXプログラム10期生のメンバーである。この日から1999年7月半ばまで1日5コマの講座(90分授業)を受ける。教えるということを生業にしていた者たちが、学ぶだけでいい機会を与えてもらえたことに、一同興奮を抑えられなかった。

  東京外国語大学の日本語教育に関わる教授陣が、世界から集まってくる国賓級の人たちに日本語を教えるスタッフとして仕事をしている中で、講義を受け、実習を積ませてもらった。日本語教授法だけではなく、語学(赴任先の言語)、政治、経済、日本史、世界史、NHKのアナウンサーの発音・アクセント講座や横田基地での教育実習。教員として過ごしているだけでは、垣間見えない世界を数多く体験させていただいた。日本文化を伝える授業では、「茶道、華道、書道」の体験や「歌舞伎、能、狂言」などについても学ぶ機会を得た。「相撲」の"世界"を伝えるため土俵やまわし、大銀杏の結い方など伝統を伝えるためにいろんなものを制作し、最後は相撲をとって見せた先生方もいた。「現場で教えているときは、いろんな先生からやりすぎとよく叱られたけど、ここでは全員が全力で、楽しみ、面白いと感じ合える。世界へ飛び出す前に、この出会いがあったことに感謝したい。」みんな口々にそう話した。

  よく耳にした言葉、「棚から牡丹餅」。教科の指導、生徒指導、行事に関わる指導、日々の猛烈な忙しさの中で、「海外で仕事をしてみたい。」「語学教師としてのスキルを磨きたい。」「世界の教育現場を見てみたい。」それぞれに、心の中で「お餅」の絵を描いていた。「定時制の英語の授業でエレキギターを弾いて、近所から苦情を言われた。」「家庭訪問先で日付が変わるまで保護者が帰ってくるのを待った。」自分の目の前にいる生徒、保護者、同僚と過ごす日常の中で理想を失わず、語学教師として高みをめざしながら、懸命に目の前の課題と向き合った。そのことは実は、絵に描いた餅が食べられる餅に代わる大切なプロセスであり、その食べられるお餅を食べる間もなく棚に据え、その据えたことも忘れるくらい触れ合う人を幸せにすることに日々邁進した。そんなある日、牡丹餅が目の前に落ちてきた。「こんな自分に、こんな幸運が舞い込んでくるなんて!」まさにそこに集った府県の代表メンバーそれぞれにとって奇跡のような出来事、海外で日本語を教えることが舞い降りてきた。絵に描いた餅が、牡丹餅になって棚から落ちてきた。

  実は奇跡が起こるための方程式があるという。先週の土曜日、大きな牡丹餅が落ちてきた。次回のブログでお裾分けしたい。