心奪われた!

 どこの国でも同じ朝の風景。最後の勝負。残り一分。間に合うかどうか。

 朝の生徒玄関で一番大きな声で挨拶する時間帯はラスト1分の駆け抜ける瞬間。全力で走っているから、全身から声が出るのかもしれません。ついついその声に反応して、「今日がんばったら明日休み!」「間に合ってよかったなぁ」などとこちらも大きな声で言葉をかけてしまうことが多々ある。

 その15分前。姿が見えてから生徒玄関まで長い時間を要している生徒たちがいる。いつも両門からやってくる生徒のみなさんを見ながら大体どれくらいの速度で生徒玄関までやってくるかの見当をつけてBest Timingで挨拶するように心がけている。赴任してから1年半たち、1年生も半年見ているのである程度自信があった。まだ、来ない。そういえば、後期に入ってから彼女たちはゆっくりと歩を進めている。挨拶を交わした後、声をかけた。「ものすごくゆっくりと歩いているね。」と私。「優雅さにはまっているんです。」(この言葉が正確か定かでない)。

 そうだ、忙しい、慌ただしい、やるべきことが次から次へと襲ってくる毎日だからこそ、「ゆとり」をもって、「時間」をかけて、心と対話しながら進めばいい。「優雅」、美しい言葉だ。ぜひはまりたい。いい言葉をプレゼントしてもらった。ありがとう!

子どもがいるわけでもないのに懸命に雪だるまを作ったあの日、暗くなるまで時を忘れて作ったあの時間。

何の意味がある?意味がないかもしれないことに夢中になって時間を費やせたことも、もしかしら優雅な時間の過ごし方だったのかもしれない。そして今一番必要なことなのかもしれない。