問い?心が一番上に来る漢字??

 時代を、未来を担う79期生を迎え、入学式を行いました。心に下支えされた様々な文字が力を与えてくれます。時に止まり、時に曲がりながら歩んでいきましょう。

以下が入学式の式辞です。

式  辞

◎桜の花びらの淡い色が、春の訪れとすべての緊張を解きほぐすように感じるこの佳き日に、大阪府立茨木高等学校、第七九回入学式を挙行しましたところ、公私ご多用のなか、PTA、後援会の各ご代表のご来賓の方々にご臨席を賜り、入学生の前途を祝福していただきますことに、心よりお礼を申し上げます。ありがとうございます(来賓に礼)。皆様には今後とも、本校の教育に対しまして温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 ただ今、入学を許可しました三六一名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。 

◎本校は、明治二八年に、大阪府第四尋常中学校として創立され、今年で創立一二九年目を迎えます。

本校の初代校長、加藤逢吉(かとう ほうきち)先生が定められた校訓「勤倹力行(きんけんりょくこう)」(意味は生活を質素に日々努力して自ら磨くということです)と「質実剛健」の校風は、現在までしっかりと引き継がれています。

◎ また、本校では、今、ご紹介した「勤倹力行」「質実剛健」の伝統のもと、三つの教育目標として、「高い志の涵養」「枠を超える知性を備えた真のリーダーの育成」「自主自律の精神の育成」を掲げ、高校生活の中で生徒の皆さんが「本物に触れること」「多様性に富む、様々な年代の個性豊かな先輩方の背中を追いかけること」「未知なることに興味を持ち、問いかけることで互いに切磋琢磨すること」ができる仕掛けを準備し、様々な取り組みを実践しています。

◎皆さんも、本校の伝統である「勤倹力行」「質実剛健」の姿勢を堅持しながら、常に「高い志」を抱き、日々の努力を重ねて学校生活を送ってもらいたいと思います。

◎それでは、本日、茨木高校の生徒として新たなスタートを迎える皆さんにお願いがあります。それは身の回りにあること、出会うことに「なぜなんだろう」という疑問を持ち、問いを立てること、問いかけること。そして未知なるものに、興味を持ち、常に好奇心が掻き立てられるよう心を開いておくこと。面白いと思う間口をどんどん広げていくこと、そして、皆さんが面白いと思うことが増えれば増えるほど世の中が豊かになっていくんだということを信じてほしいということです。

この数年間、各学校では、コロナウイルス感染症に翻弄され続け、誰もが納得、満足する答えを見つけることができず、いつももがき苦しみながら、理解が得られる対応策を探し続けました。元旦に能登地方、先日台湾を襲った地震をはじめとする自然災害に見舞われることも数多くあります。また、世界に目を向けるとウクライナやガザ地区での戦闘は続き、和平へ向かう道筋が未だ見出せず混とんとした状況が続いています。科学技術は著しく発展し、コミュニケーションのツールも媒体も豊富で、以前よりも高速で大量に情報を伝達することが可能になっているにもかかわらず、様々な問題に対して適切な話し合いが行われ、解決への道筋が示されているようには思えません。

 これまでに築き上げてきた様々な知識や技術を総動員しても解決ができない事態に次々と直面しているこの時代だからこそ「いたるところにある問題に対して、問いかけ、想像力をフル活用し、友と語り合い、新しい答えを導き出し、問題を解決する」力を持つ人物を必要としています。その力はどのような人に身につくのでしょう。それは心に下支えされた文字、恋、念、思い、想い、惑うことや恐れを感じること、悲しみ、慈しみ。心に響く音、意 ー 意思、意志、意味、意見、意図、意義。心が真ん中で柱となる文字、愛、憂い、優しさ、慶び。「心」を宿らせた様々な文字、その文字が伝え、表してくれるさまざまな「豊かな感情」や「強い想い」を携えた人にこそ、この時代を作る力が身につくのです。

 自分の目の前で話す同級生や行事や部活でスピーチをする先輩が「心に下支えされた様々なモノ・コト」をもったかけがえのない存在であるということに気づき、様々な機会に、夢、人生、世界、そして未来について語り合い、やりとりをしてください。

 この二年間、様々な年代の多くの卒業生の方々と様々な場面で出会い、お話を伺い、茨高での3年間の「おもしろいと感じること」、「誰かのために役立ったこと」がその後の人生のかけがえのない、大きな力となることは間違いないと確信しています。茨木高校に合格し、入学、通学、登校して学ぶ真の価値はそこにあるのです。巡り合う全てのモノ、コト、人からあらゆることを学び、吸収しつくしてください。

◎最後になりましたが、保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。              本校が掲げる「自主・自律の精神」の下で、お子様は自ら考え、自ら行動できる「生きる力」を備えたたくましい若者に育ちます。自由に考えていく過程で合っているかどうかという正しい答えのない問いに向き合っていきます。「正しい」という文字の上の一を取り除いたときに「止まる」という文字が浮かび上がり、その事実に直面します。そして取り除いた一という漢字を自由の由の文字に加えるとそこに「曲がる」という文字が出来上がります。正しいものを疑い、曲がりくねった道を行くため、何度も止まることを余儀なくされます。少し止まることで浮かび上がる「歩む」という文字。再度歩み始める。この過程を繰り返しながら、お子様は曲がりくねったからこそ奏でられる曲、見える景色に出会います。保護者の皆様にとってはご自身が歩んできた道だからこそ最短距離をご存じだと思いますが、どうか何度も立ち止まりながら、曲がりくねった道を歩むお子様をそばでお見守り、お声がけください。私たち教員も奏でる曲を受け止めながら共に歩んでいきます。時代を作っていく世の中の宝となるお子様をそれぞれのご家庭からお預かりいたします。学校とご家庭が思いを共有し、ともに協力し合い、子どもたちに接していくことが、極めて大切であると考えています。どうか本校の諸先輩方が築き上げてきた伝統ある教育方針を十分ご理解いただき、保護者の皆様のご協力とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

◎新入生の皆さん、さあ、今日から皆さんは「茨高生」です。                                 問うことが大事と皆さんにこの式辞の中で申し上げました。心に下支えされた漢字をたくさんご 紹介しました。心が真ん中に来る漢字に「愛」「憂う」「優しい」「慶ぶ」という文字もお示ししました。ここでお願いです。在学中に心が一番上に来るように感じる出来事と出会い、その時に宿った何かを表す漢字を作り出してください。卒業までに素敵な言葉と出会えることを心待ちにしています。

◎最後に絶対に忘れてほしくないことをお伝えします。それは疑問を持ち、問題に向き合っている皆さんを誰かが必ず「みて」いるということです。見学の「見る」。観察の「観る」。診断の「診る」。看護の「看る」。いつも、どこかで、見守っていること、いつもどこかで誰かが支えていることを心の中に携えておいてください。

 今、ここから始まる皆さんの高校生活が、新しい自分を発見し、世界を創る力を身につけ、実りあるものになることを心から願い、私の式辞といたします。

                  令和6年4月8日大阪府立茨木高等学校 校 長 高江洲 良昌