高く跳べたら...

~ 中学、高校5年間、ただひたすらそのことばかり考えていた。どうやったら様々なハンディを乗り越えて高く跳べるのか。身長が170cmに満たない。100m12秒を切れない。リズム感が悪い。高く跳ぶのに必要な要素を欠いていた(当時ずっとそう思っていた。)克服するために、ひたすら牛乳を飲む。走りこむ。筋力をつける。中学時代に大阪4位になった。高校で上位の大会に進出し、体育の教師になりたかった。残念ながら、大阪の大会で一桁の順位に入ることができなかった。最後の試合を国体予選と決め3年の夏休みまで取り組んだが、185cmからの試技。ベスト記録から跳び始めるのはあまりにも酷で、3度頭からバーに飛び込み、引退となった。 ~

懸命にやったんだ。これ以上ないくらい練習したんだ。勉強のできない自分にとってこれしかないと思って取り組んだ。3回バーに頭をぶつけた時、マットの上で空を見上げた。IHの時は大雨で体はずぶ濡れだった。見上げた空はグレー。大きな雨粒が次から次へと落ちてきた。

 国体予選、バーと一緒にマットに横たわって見た空は青かった。空の広さや高さに気づくことはできなかった。ただただひたすら自分を責めた。44年経った今、マットで横たわる44年前の自分を見たらきっとこう言う。

「君にしかできない努力をしただろう。世界中の誰も知らなくても、君は知っているだろう。君が精いっぱいやったことを。応援してきたし、これからも応援するよ。勇気を与えてくれてありがとう。」

 ひたむきに走る姿はいつも心を打った。ずっと応援してきたし、これからも応援するよ。あなたたちが与えてくれた勇気、力は果てしない。44年後の長居競技場でそう感じた。

 ありがとう。ありがとう。ありがとう。