写真部の活動

          Ⅰ 第35回大阪府高等学校芸術文化祭写真部門報告

平成27年1月31日、2月1日の2日間で開催された芸文祭。生野高等学校は4年連続で優秀賞を受賞し、4年連続で全国大会行きを決めました。
今年も全国大会で健闘できるように頑張ります。
以下に作品と顧問評を紹介します。

ひとしずくの光 田村珠希.jpg
ひとしずくの光
(奨励賞受賞作品。全出品作品367点中ベスト34)
暗がりの中、わずかな光がもたらす効果をうまく使って作品に仕上げた。瞳や頬のラインを浮かび上がらせる逆光が効いている。視線の先には、うずくまる少女の姿がある。だらりと下がった腕、裸足の白い足が見える。陰鬱な印象をあえて醸し出すことで、傷つきやすい少女の内面を映像化することに成功している。絶望の中にこそ希望を見いだそうとする人間のありようが、瞳の輝きに凝縮されて、タイトルと相まって、切ない思いが伝わってくる。

心をこめて 前田莉奈.jpg
心をこめて
ラグビー部が疾駆しながらボールを回してゆく姿を、流し撮りという手法で撮影した。あえて、スローシャッターを使い、ぶらすことで動感を表現している。光の使い方もよく、夕方の斜光を使うことでドラマティックな雰囲気に仕上がっている。3枚中2枚は、思い切ったフレーミングで身体の一部を映し出しているが、あえて顔を見せないことによって動きそのものに注目させる効果を狙っている。

おばあちゃん 米田知佳.jpg
おばあちゃん
(優秀賞受賞作品。全国大会推薦決定。全出品作品367点中ベスト4)
タイトルは「おばあちゃん」だが、本当は御年98歳の「ひいおばあちゃん」がモデルだ。人形作りをライフワークとされているという。克明に観察を重ねた上で、しっかりと撮影出来ている。光の使い方、シャッターチャンス、フレーミング、三拍子そろった秀作である。技術的にも申し分ないが、最もすばらしいのは、ひいおばあちゃんを敬愛する気持ちが見る人にちゃんと伝わるということ。ひ孫に撮影してもらった写真はひいおばあちゃんにとって最高の宝物になると思う。これからも撮影を重ね、写真集にして100歳の誕生日プレゼントにしてあげて欲しい。

それでも明日はやってくる 泉るる子.jpg
それでも明日はやってくる
一瞬ぞっとする写真でもある。それでも目を背けずによく見ると、これは生命賛歌に思えてくる。一匹の虫の命はアリたちの大切な食糧となり、落ちたお地蔵さんの顔にも微笑が浮かんでいる。そして最後は、散った花びらに一条の光。無残に見える現実も人の気持ち次第で明るい方向に転換できるんだ、そんな希望を感じさせてくれる写真だ。目の前のモノを、現実を、どう見て、どう捉えるか、これは主体性の問題である。そして写真は被写体を主体的に記録することによって、見る人に強いメッセージ性を持つことになる。

旅への思い 丸山貴司.jpg
旅への思い
平成元年より運行を続けてきた寝台特急「トワイライトエクスプレス」(大阪~札幌駅間)は、車両の老朽化により平成27年春の運転をもって運行が終了、廃止となる。鉄道ファンの作者は、大阪駅に足繁く通って別れを惜しむような気持ちで撮影したようだ。深々と頭を下げる乗務員のコックさん、最高の笑顔で出発する車掌さんの姿など、この電車をこよなく愛する人たちの姿がうまく捉えられている。好きな被写体を持つことは、上達の早道となる。写真の王道は「記録」であり、目の前にある「現在(いま)」を残したいという強い思いこそが、作品に力を与える。

双子 柳井陽貴.jpg
双子
この双子の写真を長らく見てきた。作者のお姉さんもかつて写真部で、この妹たちをよく撮っていたからだ。ちょっと見ない間に大きくなったなあと、まるで親戚のオジサンのような気持ちになった。生活感と臨場感にあふれるショットで、まったくヤラセがない。作者は、すでに彼女たちの前では空気と化し、自然にそこに存在しているだけである。腕利きカメラマンの条件は、「自らの存在」を相手に認めてもらいながらも、「カメラの存在」を被写体に意識させないことだ。この距離感を第三者にも適応できれば、すばらしい。

Action 吉田香純.jpg
Action
ラグビー部さんを撮影させていただいたもう一つの作品「心をこめて」とは対照的に、動きを写し止める手法で、決定的瞬間を捉えている。人間の目は、通常1/60くらいの速さで世界を連続的に捉えている。しかし、カメラは数千分の1秒という超高速の世界で世界を切り取ることも可能だ。バウンドしたボールをキャッチしにいく指の緊張感と舞い上がる砂、重いタイヤを押した後の轍(わだち)と息切れする選手、懸命な練習で汚れたユニフォームと手を洗う水の滴の美しさ、どれもフォトジェニックである。このような何気ない日々のシーンにこそドラマが潜んでいる。カメラマンの目は、こうした日常にドラマを見いだし、リアリティを与えていく。

さびしさ 大釈弓香.jpg
さびしさ
大阪南港には、カップルが錠前をかけにくる場所があるという。「変わらぬ愛を誓って」、ということなのかもしれない。しかしこの錠前たちは、タイトルの通り、どこかさびしそうである。雨に濡れて人知れず錆びてゆく錠前たち。整列したり、からみあったり、ポツンと夕日に照らされたり・・・。この錠前たちをここにかけたカップルがここに戻ってくることはあるのだろうか、などと想像してみる。これまでなかなか自分らしい写真を撮るのに苦労してきた感があった作者だが、この作品で確実な成長の跡を見せてくれた。

おんな 上條麻央.jpg
おんな
絶妙の光を使って2人の女性を表現している。あでやかに紅をさす口元だけを切り取って、妖艶な世界を映し出した。モデルはおばあちゃんとお姉さん。作者は丹念に家族を被写体にして、作品を生み出してきた。家族写真は、撮れそうでなかなか撮れない。いつも傍にいる人ほど、距離感が難しい。写真は近すぎても遠すぎても撮れない。一定の距離を保ちながら信頼関係を築かないとといい写真は生まれない。その点において、この写真は大いに評価できる。至近距離から撮影されているのに、被写体に妙な「照れ」や「気負い」がないからである。光を読む力と良好な人間関係が生み出した秀作と言える。

ひとりぼっちの卒業式 中西彩佳.jpg
ひとりぼっちの卒業式
写真は大きく分けると、ドキュメンタリーと創作があるが、この作品は後者である。創作であっても、陳腐なヤラセは作品として安っぽくなる。そこにリアリティを感じさせないからだ。いい芝居や映画などが作り物だとわかっていながらも我々に感動を与えるのは、リアリティがあるからに他ならない。大げさに言うならば、何らかの「真実」がそこに含まれていないと、人のココロを揺さぶることは出来ない。この作品を制作する途中、顧問からそういったダメだしを随分されて、きっと辛かったことだろう。しかし、やはり努力しただけのことはあった。この作品にはリアリティを感じる。

福笑い 木下穗香.jpg
福笑い
(奨励賞受賞作品。全国大会推薦決定。全出品作品367点中ベスト10)
見た瞬間、「オモシロイ」と唸った。インパクトがある。4人の目元と口元がバラバラになっていて、まさに「福笑い」。スマホという現代のツールをうまく使い、楽しい写真に仕上げた、遊び心満点の写真だ。茶目っ気のある作者だからこそ思いついた発想で、アイディアの勝利。しかし思いついた発想を形に出来るのが実力というものである。
写真は「時代」を、写し、映す。そういう意味でもこの写真は貴重な記録となる。この作品が最後まで優秀賞争いに食い込んでいたのも、確かに頷ける。

1日という1日 松井文香.jpg
一日という一日
入部してまだ日は浅いものの、これだけしっかり撮れれば大したものである。組写真というものは、複数の写真を並べればよいという単純なものではない。各々の写真が有機的につながり、テーマに膨らみを持たせ、1+1=2ではなく、5や6にならなければ意味がない。しかし場合によっては、1+1=0.5 になること(つまりは蛇足)もあるから難しい。雪の伏見稲荷、シンボルの赤い鳥居、寒そうに歩く神主や巫女、狐のシルエット。素直に感じたままにシャッターを切っていて実に清々しい。写真を撮る動機は、ココロが何かをキャッチすること。これなくして、ただ撮っただけの写真はツマラナイ。

家族愛 真鍋義人.jpg
家族愛
お手製のおにぎりで弁当を作り、お父さんに笑顔で手渡すお母さん。何気ない朝の光景なのだろうが、見ていてホッとする写真である。コンビニや外食産業の台頭で、確実に家の弁当の出番は昔に比べて減っているだろう。しかし作者の家では、いそがしい朝、早起きして弁当を作ってくれるお母さんがいて、ご苦労様と言ってもらえて、きっと仕事に精が出ることだろう。息子である作者も日々そのように感じているからこそ、この作品が生まれたのだと思う。課題は、決まりすぎる写真を意図的に外す努力をしてみることか。安心できるほのぼのした写真の落とし穴は、予定調和に陥ることである。常に新しい映像表現に挑戦する気持ちを忘れず、うれしい裏切りも今後は期待したい。


                   Ⅱ 写真サミット報告
 
写真サミット報告.pdf


                   Ⅲ 平成27年度活動の柱 

1.写真部これまでの主な実績
・全国高等学校総合文化祭(4年連続出場)
・2012年写真甲子園本戦出場
・2012年、2014年高校生写真サミット出場
・その他、各種コンテスト等に多数入選

2.主な活動の柱
・写真による自己表現力を高めて、人を感動させる写真を撮る。
・写真を通じて仲間と親睦を深め、コミュニケーション力を養う。
・総合文化祭や写真甲子園、写真サミットを目指す。
・校内の行事を記録して、学校に貢献する。
・社会とつながりを持ち、ボランティア活動をする。

3.年間活動予定表(だいたいこんな感じで活動しています)
4月  新入生を迎え、新スタート  写真甲子園準備本格化。
5月  写真甲子園予選応募(予選通過すれば夏休みは北海道で本戦)
      トップアイ応募① 
6月  体育祭撮影
     芸文連春の撮影講習会(梅田・中津界隈)。
     春のフォトコンテスト (兼 近畿高等学校総合文化祭予選)
7月  芸文連夏の撮影競技大会  夏の撮影会(玉川峡)
合宿(7月22日~24日予定。於:信貴山)
8月  写真甲子園本戦(8月3日~9日) 全国高等学校総合文化祭(滋賀大会)
9月  文化祭校内展示  トップアイ応募②
10月 芸文連秋の撮影講習会 
11月  近畿高等学校総合文化祭 トップアイ応募③
12月  冬の撮影会(長居植物園)
1月  芸文祭作品制作 トップアイ応募④
2月 大阪府高等学校芸術文化祭 (兼 全国高等学校総合文化祭予選)
      全国高校生写真サミット(トップアイで上位10位以内にいれば横浜へ)
3月  卒業式 入試合格発表などの撮影

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