ノーベル平和賞!

 ノルウェー・ノーベル賞委員会は10日、2014年のノーベル平和賞を、女性や子どもの権利を訴えてきたパキスタンのマララ・ユスフザイ(Malala Yousafzai)さん(17)とインドのカイラシュ・サトヤルティ(Kailash Satyarthi)さんの2人に授与すると発表しました。今年のノーベル平和賞は、いずれも子どもの権利、女性の権利、教育を受ける権利を訴え活動を続けてきた二人に与えられました。今、世界では地域紛争が絶えず発生し、テロリズムや極端な宗教概念や貧困によって、多くの人々が生活を奪われているという報道が、日々マスコミに流れています。そのような実態の下で、教育を受ける権利をはく奪された子どもたちが何十万、何百万人も存在することへの警鐘が、今回のノーベル平和賞となったのではないかと思います。

 マララさんは、2013年7月に国連で行った演説が、とても有名です。日本でも多くのマスコミが取り上げましたので、皆さんも知っている方がほとんどだと思います。以下の文です。

So let us wage a glorious struggle against illiteracy, poverty and terrorism, let us pick up our books and our pens, they are the most powerful weapons. One child, one teacher, one book and one pen can change the world. Education is the only solution. Education first. Thank you.

 

 これほど明確に教育の必要性・可能性を語った言葉が、わずか10代の少女の口から出たことが驚愕です。でも、彼女のおかれた境遇からすれば、彼女だから発せることができる心の叫びの言葉だと思います。教育に携わる者として、彼女が行った国連での演説の全文を読んでみようと思いました。マスコミで取り上げらた上記の文は、彼女が演説で一番最後に語った部分です。それまでに彼女は、多くのことを語っていることがわかりました。自分なりに感じたことを述べたいと思います。

 

 ご存知のように、彼女は過激派組織に銃で撃たれました。生死の境をさまよいました。そのことについて彼女は、以下の様に語っています。

 

Even if there was a gun in my hand and he was standing in front of me, I would not shoot him. This is the compassion I have learned from Mohamed, the prophet of mercy, Jesus Christ and Lord Buddha. This the legacy of change I have inherited from Martin Luther King, Nelson Mandela and Mohammed Ali Jinnah. 

 This is the philosophy of nonviolence that I have learned from Gandhi, Bacha Khan and Mother Teresa. And this is the forgiveness that I have learned from my father and from my mother. This is what my soul is telling me: be peaceful and love everyone.

 

 彼女の心には、宗派を超えた「慈悲の心」、人権をかちとるために活動を続け来た人々の「変革の財産」、そしてガンジーやマザー・テレサが訴えた「非暴力」の精神が、きちんと継承されています。そして父母から学んだのは「許しの心」なんだと言っています。彼女の中にこれだけの精神が継承されているのか・・・。ほんとうに驚かされます。彼女はイスラム教のスンニ派に属しているとのことですが、彼女の父は、女子教育を推進する学校の経営しているそうです。彼女にこれだけの精神を育てた父母の教育の素晴らしさを改めて実感しました。

 私は、この「許しの心」というのがとても重要ではないかと感じています。少し話はそれますが、ローマ帝国が千年続いた要因のひとつに「寛容」の精神があったと言われています。帝国という言葉から抑圧と収奪をイメージしてしまいますが、実際は違うということです。カエサルがガリア(今のフランス)に侵攻し、勝利を治めた後に行ったことは、地元住民の自治の権限を認めること、そして彼らの信じる宗教を認めることでした。そして、当時のハイテクノロジーである道路建設を行い文明を支配地にもたらしたのです。大英帝国の首相であったウィンストン・チャーチルはローマ軍がブリタニアの海岸に達した「紀元前55年8月26日から大英帝国の歴史が始まる」と述べているように、ローマ帝国の支配とは文明による寛容な支配だったのです。もしかすると、この「寛容の精神」が、マララさんのいう「許しの心」が世界に起こる紛争の解決の糸口かもしれません。

 

 彼女は、教育の必要性を次のように強調しています。

 

 Dear brothers and sisters, we want schools and education for every child's bright future. We will continue our journey to our destination of peace and education. No one can stop us. We will speak up for our rights and we will bring change to our voice. We believe in the power and the strength of our words. Our words can change the whole world because we are all together, united for the cause of education. And if we want to achieve our goal, then let us empower ourselves with the weapon of knowledge and let us shield ourselves with unity and togetherness.

 

彼女は、「the weapon of knowledge」すなわち「 知識の武器を持とう、そして連帯してひとつになって私たちを守りましょう」と呼びかけます。これほど学ぶことの意義を明確に語れるのは、やはり学ぶことを奪われた者だからだと思います。学ぶことが当たり前のようにある者にとっては、「なぜ学ぶのか?」が明確に意識できない、逆に「学ぶこと」が自分を抑圧するものとして感じてしまう。私たちは、もう一度彼女の言葉に真摯に向き合わなければならないのではないかと思います。

 

 今年のノーベル賞は、最初に述べたように子どもの権利・教育を受ける権利が世界中で奪われいる現状に警鐘を鳴らしています。日本でも「失われた20年」の間に「こどもの貧困」が急速に進んでいます。親の失業、低所得、離婚などは、子どもの学習環境に直接影響します。今の日本に子どもを救うセイフティ・ネットがどれだけ整備されているか、私たちはもう一度見直さなければならないのではないかと思います。

 

 市岡高校の生徒のみなさん、そして保護者のみなさん、マララ・ユスフザイさんとカイラシュ・サトヤルティさんのノーベル賞受賞を契機に、もう一度自らの学びを考える機会になることを願っています。教育に携わる者として私自身も自らの活動を見直す機会にしたいと思います。

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