戦後70年を迎えるにあたって

 戦後70年を迎えるにあたって、一冊の本を紹介したいと思います。中公新書の「『歴史認識』とは何か―対立の構図を超えて」という新書です。2015年7月25日に発売されています。著者は、元東大教授で現在明治大学特任教授の大沼保昭氏です。この本は、ジャーナリストである江川紹子氏が、教授にインタビューをし、それに対して教授が答える(答えるというより、江川さんいわく「私への講義です」)という形で書かれています。ですから、難しい問題に対しても、教授はわかりやすく語ってくれています。私がこの本を知ったのは、読売新聞特別編集員である橋本五郎氏が自身のコラムで紹介していたからです。本屋に行っても「嫌韓」「嫌中」の本が並んでいます。日本と韓国・中国の互いの相手国への国民感情も最悪な状況です。一方、韓国や中国のマスメディアの報道に接していると「どこまで謝罪を要求するのか?」と憤りも含めて素直に疑問を感じます。それらは、すべて1931年から1945年に始まった戦争の責任についての、そして戦後の責任についての「歴史認識」に由来しています。この間の日韓関係、日中関係やアジアの中の日本を考えたときに、一人の日本国民としてずっと心の中に整理できない「もやもや感」を抱えていました。そんな「もやもや感」をこの本は解決してくれます。

 江川さんが大沼先生のことを知ったのは、橋下大阪市長が「慰安婦問題」について発言をし、世間的に大きな話題になった時です。江川さん自身が「従軍慰安婦について、私はあまりにも知らないことが多い」と自覚して、大沼教授を訪ねたと書いておられます。そのとき、江川さんが大沼教授の話を聞いて感じたことを次のように書いておられます。少し長くなりますが、引用させていただきます。

「こうした問題になると、とかく糾弾調や異論を切って捨てる強い口調の議論が多いなか、大沼先生の話は全く違っていた。自国の負の部分を強調する『自虐』でもなく、逆に負の部分から目をそらして自国の正当性を言い募る『独善』でもなく、あるいは今の状況を作った〝犯人〟を探して責め立てるのでもない。冷静に事実を見つめ、原因を探り、現象を理解しようと努める。被害者である元慰安婦に対して心を寄せる一方、韓国の対応の問題点を指摘し、これまでの平和主義的な教育に反撥する日本の若い人たちの心情を受け止める。異論を包み込み、そこから学び取ろうという姿勢は、先生が真摯な学者であることを示していると同時に、日本の戦争責任・戦後責任の問題と実践的に向き合ってきたなかで培われた包容力・バランス・忍耐力のたまものなのだと思った。」(「聞き手をつとめて」より 本書231ページ)

 この本を買ってから、最初の章を読み始めて3日で読みました。それほど、この本は魅力のある素晴らしい本です。読み終わった後に、江川さんが書いておられるこの文章と全く同じ感想を私も持ちました。是非、多くの人に読んでほしい。これから、日本の社会で活躍するであろう高校生のみなさん、アジアの世界で生きていく日本の若者たち、是非この本を読んでほしいと思います。アジアで、世界で生きていく、これからの日本人の生き方を示してくれている本だと思います。

 

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