イオンクラフトの浮上実験


 ~イオンクラフトの浮上実験~ 

研究者2-10 T.K. Y.S.
指導者:物理教諭 T


イオンクラフトは、主に「バルサ材」「アルミ箔」「銅線」からつくられるとてもシンプルなもの。これに高電圧を加えると、浮上力を発生させることができる。宇宙探査機「ハヤブサ」イオンエンジンなどに応用されている。


Ⅰ研究動機、目的

去年の4月に初めて、イオンクラフトの存在について知った。そこでイオンクラフトに興味を持った僕たちは、インターネットなどで調べた。イオンクラフトはモーターもプロペラもないシンプルな構造をした物体が高電圧を加えただけで浮くということを知り、これについて探究活動を行うことを決めた。


今回は、イオンクラフトが浮上する原理を予想し、それに基づいた実験を行い、その予想が正しいかどうかを確かめることを目的とした。


Ⅱ実験の流れ


イオンクラフトの上部と下部の極板面積の違いによって風が生じるのではないか、という仮説を立てた。上下の極板形状の異なる様々なイオンクラフトに高電圧をかけて、風が発生するかどうかを線香を用いて調べた。仮説が正しいかどうかをその実験結果よって証明しようとした。


Ⅲ実験の内容


・電圧は20000V、アルミ箔と銅線の間幅は4cmにしてすべての実験で共通の条件にした。そして、イオンクラフトを ① 一般的な形(写真1) ②上下対称の形(写真2) ③ 特殊な形Ⅰ(写真3)    ④ 特殊な形Ⅱ の4通りの形を作り、電流を流した。

①一般的な形

・「一般的な形」とは正三角形の形をしたイオンクラフトの、上部に銅線、下部にはアルミ箔、を使ったもの。(写真1)これに電流を流した。
結果は風がおこり、浮上した。

㊤アルミー㊦アルミ(面積:㊤=㊦)
・このイオンクラフトは先ほど(①)の、「上下非対称」なイオンクラフトとは違い、上部と下部の両方にアルミ箔を使ったもの。(写真2)これに電流を流した。結果は、少し線香の煙が動いたが、ほとんど風が生じず、浮上しなかった。

③特殊な形Ⅰ
このイオンクラフトは先ほどの「一般的な形」の側面に貼っていたアルミ箔を底に移動させたもの。(写真3)これに電流を流した。結果は、風がおこったが、下の極板にあたるため浮上しなかった。

④特殊な形Ⅱ
・①で用いた「一般的な形」の銅線の部分を下より幅の狭いアルミ箔に取りかえてこれに電流を流した。結果は、風がおこったが、弱かったため浮上しなかった。


9.jpg (写真1 上下非対称一般型)

10.jpg (写真2 上下対称型)

11.jpg (写真3 上下非対称特殊型)

12.jpg (写真4 イオン風)


Ⅳ考察、結果から得られる浮上原理
 


・実験結果をまとめると、①③で強い風がおこり、④では弱い風がおこり、②では風が起こらなかった。このことは次のように考察できる。

・①で用いた「一般的な形」のイオンクラフトに電圧をかけると、負の電荷を持った電子が導線を通り、陽極から陰極へ移動する。それによって陽極にはプラスの電気、陰極にはマイナスの電気、がそれぞれ同じ分だけ蓄えられる。そして電流を流し続けると、極板面積の小さい陽極側では陰極よりも先に蓄えられる限界がくる。しかし陰極側ではまだ電子を蓄えることができる。そこで陰極に電子を供給するために、陽極が付近の気体分子から電子を奪う。

その結果電子を奪われた気体分子は陽イオンとなり、陰極側に引かれて移動する。この気体分子の流れがイオン風の正体であると考えられる。そのため極板面積が異なる程、イオン風は強くなり浮上力が大きくなる。

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