授業を教える機会がなくなって8年めを迎えた私が言うのは本当に大問題であるが、授業をさまざまな形で拝見する中で率直に感じる点だ。どのようなサイズの問いを、どの順番でどのタイミングで行うか。頻度はどれくらい。難易度は。確認はペアで行うのか。グループか。答えは一つなのか複数なのか。オープンクエスチョンか否か。
さまざまな目標設定の中で上記の観点で問う。昨日の教育実習生の保健の研究授業には驚いた。
目標はー現代社会と健康について課題を発見し、解決方法を考え、判断し、それを表現する。生涯を通じて健康の保持、回復をめざす実践力を育てることー。この目標のもとに示された一枚のスライド。アメリカメジャーリーグで大活躍する選手を「だれか」という問いから始まった。みんなが知っていて、尚且つ、興味が持てる人を選ぶこと。そのスケジュールを次のスライドで示し、問いかける。自らの高校生活との違い。活躍している秘訣についてだ。興味を持てる題材であること、自らに引き付けて考えられること。次の次のスライドで自分たちに実践できそうなことがあるかという問い。ここで自らの生活で生かす実践力についての言及がある。学ぶ人がスムーズに教授内容に引き込まれ、気が付くと目標に向かって生徒みんなが進んでいる。スライドは一番下段に問いが示されていくように構成されている。コケコッコー症候群(孤食、欠食、個食、固食)、メロンパンとブドウパン、頭に残りやすいキャッチ―な言葉や日常生活で実際に選択が迫られる場面などが次々に示されながら授業が進んで行く。ワンスライド、ワンメッセージ。配置への配慮。そしてペアワークの後の生徒のアウトプットするチャンスの与え方など、自身の考えや先生方のアドバイスの下、生徒たちが知識、技能が習得されやすいようにさりげなく授業が展開されていた。教育実習生の明瞭で、的確な指示。そして、何より生徒のみなさんの参加する構えが本授業をより良いものにした。スライドの正解『翔平~大谷っ』のコールや列の全員が当たる中で誰一人同じ答えを言わない。ペアワークがうまく機能したこととより多くの価値観をみんなで共有しようという姿勢が示された。それは実習生が机間巡視の際に生徒のみなさんの作業の進み具合を丁寧に見たうえでみんなに問いかけられたからに他ならない。
力を引き出した実習生、心から応じた生徒たち。ああ、未来は明るいなぁ。最後まで授業を拝見できず、校長室までの小走りは途中でスキップに変えられるくらい軽やかなものになった。昔なら、「皆さんを待っていますよ」と笑顔で声をかけるところだが、令和の時代はそうもいかない。一人でも多くの意欲溢れる若者に、我々の世界で未来を担う人々と触れ合う機会を持ってもらえることを切に願う。いい時間をいただけました。授業を見せてくれた先生(実習生)、パワフルな生徒さんたちありがとうございました。