多様性について―続き

 先日本校で行われた多様性についての取り組みの報告をさせていただきました。取り組みをまとめた冊子をみると、テーマ別にまとめられています。「障がい者について」「在日韓国・朝鮮人について」「ニューカマーについて」「琉球民族について」「アイヌ民族について」「女性問題について」「その他」です。そこで細かい内容を見てみると、「イラン出身の社長さんにインタビュー」という内容が目に留まりました。今回の発表の内容でイスラム世界に関わる内容は、これぐらいかな・・・と思います。そこで、最近とても気になっていることを書きます。

 Islamic Stateに関するニュースが流れない日はないほど、イスラムの世界に世界中の注目が集まっています。湯川さん・後藤さんの事件があってから、またIslamic Stateが日本や日本人をターゲットにすると宣告してから、俄然日本でも関心が高まったのは周知の事実です。もう、中東での出来事が「対岸の火事」で済まない事態になっていると多くの方が感じているのではないでしょうか。おそらく高校生に「イスラムってどう思う?」と聞くと「怖い」とか「残虐」とか「テロ」という言葉が返ってくるでしょう。ですが、私たち日本人はどこまでイスラム世界のこと、特にイスラム教について知っているでしょうか?日々ニュースで流される出来事だけからは、広く深くイスラム世界を知ることができません。その結果、イスラム世界に対して「よくない感情」がうまれ、それが偏見という認識に発展し、差別という行動に発展することを私は懸念します。今だからこそ、きちんとイスラム世界について知る必要があると考えています。

 イスラム世界を知るうえで難しいことは、イスラムの世界とイスラム教は切っても切れない関係、というよりはイスラム世界≒イスラム教といってもいいほど密接な関係にあるということです。なのでイスラム世界のことを学習しようとしてもなかなか難しい。公立学校で特定の宗教に関する学習が許されていないので、戦後新しい教育基本法が施行されてから、ずっと「宗教教育の必要性」は言われながらも、実際に公立学校では宗教に関する教育はほとんど行われて来なかったのが現実です。それは戦前に公教育が国家神道に密接に関係してしまった反省から来ることですが、私は戦後十分に宗教教育が行われなかったのは、それだけではないと思います。それは、日本人がいわゆる「無宗教」という、世界からみれば極めて特殊な民族であることと関連していると思います。赤ちゃんが生まれれば神社にお宮参りをし、毎年クリスマスには全国でにぎわい、亡くなったときはお寺からご住職がきてお経をあげてもらう(誤解があってはいけませんので、お寺に関係しない葬式をあげる日本人も当然いるということを申し添えます)。そんな日本人は「一体、あなたは何の神を信じているのですか?」と外国人から見られます。「神を信じる」という行為が、海外では密接に生活に関連しているのです。グローバル社会の到来で「さぁ、異文化理解だ!コミュニケーション能力だ、さぁ英語を話せなければならない」と声高に言われていますが、「神(自分が信じている宗教)について語れない人間」は海外では信用されにくいし深い付き合いが難しいということを、私達はもっと知るべきではないかと思っています。では「それなら市岡高校はどうするのだ?」といわれてしまいますと、これもお手上げ状態で、宗教教育についてどうしていいかわかりません。情けないですが、それが事実です。

 さて、話を元に戻します。イスラム世界のことです。まず、私たちにとって大事なことは、イスラムのことを十分に正しく知ることから始めなければならないと思います。イスラム教徒はどんな宗教なのか?イスラム世界では、なぜ紛争が現在も絶えないのか?イスラム教とテロリズムはどのように関係するのか?などなど・・・・。知らなければならないことは、たくさんあります。たとえば、こんな基本的なことを知っていますか?「ユダヤ教の神であるヤハウェ、キリスト教の神であるゴッド、イスラム教の神であるアッラーは同一の神である。同じ神を信じる宗教である」という事実。三つの宗教とも一つの神を信じる一神教ですが、それは同一の神を信じる宗教であるということです。そうしたら、何が違うのかということですが、ここからは本を紹介したいと思います。保護者の方にも読んでほしい本です。池上彰著「高校生からわかるイスラム世界」(集英社)と高橋和夫著「イスラム国の野望」(幻冬舎新書)です。

 池上氏は、もう皆さんもご存じでしょう。毎週どこかのテレビ局に出演されています。「高校生からわかるイスラム世界」は、イスラム教についての基本的な事象、スンニ派とシーア派のとらえ方から、中東問題、9.11同時多発テロ以降の中東の様々な戦争・紛争についてわかりやすく解説してくれています。集中すればほぼ二日で読める内容です。ちょうどIslamic Stateが登場する直前までの入門書と理解してください。高橋和夫氏は、放送大学の教授で、この間のIslamic State問題の専門家としてよくテレビで解説をされている方です。「イスラム国の野望」は、中東問題の基本的事項から「アラブの春」「イラクの内紛」などをへてIslamic Stateが登場する現在までを書いてくれています。高橋氏があとがきで書いていますように、この本は「わかりやすく、もっとわかりやすく、さらにもっとわかりやすく」をモットーに書かれた本ですので、その通り非常にわかりやすく書かれています。

 最年少でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんは、パキスタン人でイスラム教スンニ派を信じています。同じイスラム教を掲げるアフリカのボコ・ハラムもイスラム教スンニ派です。マララさんは、教育の必要性を強調し、一方は否定する。とてもわかりにくい状況です。世界では、今イスラム教徒が増加しているといわれています。世界最大のイスラム教徒の国は、中東の国ではありません。インドネシア共和国です。日本人が世界と付き合っていくとき、もうイスラム世界抜きには無理だろうと思います。この機会に、イスラムについて正しく知ることから始めたほうが良いと思います。

 最後に大阪にもマスジド(モスク)があります。西淀川区にあります。こんなに身近にあるとは知りませんでした。もし話を聞けるチャンスがあれば、いろいろ聞いてみたいと思います。 

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