平成27年度後期始業式―己を最大限鍛えよ

 本日10月21日から後期がスタートします。気持ちも新たに1時間目は体育館に集合しての始業式です。始業式では、以下のような内容を話しました。

 

 まず、1年生の勉強に臨む姿勢について私から厳しく指摘をしました。(これについては、本日配布させていただいた校長通信第5号をご覧ください。)続いて、昨日受けた校長研修の内容が、私が伝えようとしていた内容とマッチしましたので、研修の講師の當作康彦先生の講義を引用しながら話をしました。當作先生は、カリフォルニア大学サンディエゴ校の教授で、第二言語習得理論と外国語習得法をご専門にされています。研修のテーマは「グローバル人材の育成」でした。

 私が市岡生に対して「学びを重視しなさい」と言っているのは、今の生徒たちが卒業後に生きる21世紀という社会が、「夢見る理想社会」ではなく、非常にリスキーな社会であるからです。以前からこのことを何度か伝えてきましたが、當作先生もまさにそう話しておられました。たとえば、アメリカ労務省の調査では、18歳から38歳までの間に平均して10~15の仕事に就くそうです。これが、ステップアップのための転職であれば、別に問題にする必要はないのですが、リストラや倒産などいったん掴んだ社会的地位が非常にもろく崩れる結果の数値なのです。そして、グローバル化がどんどん進んでおり、そのために世界中で労働の均質化が起こっているということを、當作先生はT-シャツを例に次のように言われました。1950年代、T-シャツはアメリカ・テキサス州で生産されていた。テキサス州の青年たちは、学校卒業後、T-シャツ工場に就職し、それなりに安定した人生を歩んでいた。ところが、より安い労働力を求めて、企業は工場を移転していった。テキサスの次は、日本、そして韓国、中国、インドへ。今は、バングラデシュでアメリカ人が着るT-シャツを生産している。そして、現在ではバングラデシュの労働の質が向上し、均質化が起こり、昔アメリカや日本で製造していたT-シャツと同等のものが製造できるようになっていると。また、こんな話も當作先生はされました。「今、アメリカでコールセンターに電話をかけるとどこの国につながると思いますか?」と。10年前までは、インドだったらしいです。インターネット回線で電話代が無料なので、アメリカにコールセンターを置くより、海外に置いて英語で対応させるほうが人件費が安くつくというわけです。現在は、フィリピンにかかるそうなのです。きれいなカリフォルニア英語を話すと先生は言っておられました。フィリピンは、国策として英語、それもアメリカ英語に力を入れて、コールセンターの仕事を獲得したのです。こんなことも紹介されました。「ニューヨークタイムズ」のコラムニストであるトーマス・フリードマンが「The World Is Flat」(2005年)を出版し、グローバル化の進行とその影響について述べています。「Flat」、まさに均質化に言及しているのですが、フリードマンはその中で、ジョークとしてこんなことを書いています。「昔、僕が子供のころは、母にこのように言われて育てられた。『トム、物を残さないで食べなさい、インドや中国では飢えで困っている人がいるのよ』と。今、僕は娘にこのように言っている。『ちゃんと宿題を終えなさい。インドや中国の人たちが、君たちの仕事を狙っているんだから...』と」。今のグローバリゼーションをうまく表現したジョーク(実際はジョークではないと思いますが)です。先生は、「日本と言わないところが、またミソですよね」と付け加えておられました。

 さらに、21世紀は、技術開発がものすごいスピードで進んでいる時代で、たとえば、去年の世界のテクノロジー企業の成長率がこのまま続けば、21世紀の100年間に2万年分の成長を遂げることになるらしいです。すさまじい勢いです。この勢いが何をもたらすか?職業の大変革です。今ある職業がどんどんなくなり、ロボットにとってかわられ、新たな職業が生まれてくるだろうということです。たとえば、Googleの社員は、しばらくすると「無人カー」で通勤することになるだろう、2030年にはタクシーの運転手が無くなるのではないか...。また、amazonは、宅配をドローンに行わせる研究をしているそうです。こうなれば、宅配業者の仕事はなくなります。さらに、シリアやアフガンで無人機による空爆が行われていますが、このテクノロジーを発展させて、何年かのちには太平洋上の旅客機は無人機になるだろうと。パイロットは、極めて高度な知識と技術が求められる職業ですが、その職業が無くなるかもしれないということです。

 21世紀は、何が起こるかわからない社会です。だから、本当に生きる力が求められる。その生きる力を身につけるためには、現在今君たちが習っている学習内容を身につけるのは最低限の仕事です。なぜなら、今君たちが習っていることは、人類が積み重ねてきた英知だからです。その英知を身につけたうえで、さらに生きる力をどうやって身につけるかが求めれるのが、21世紀です。高校時代に最大限自分を鍛えなさい。市岡の生徒のポテンシャルはとても高い。そのポテンシャルを高校時代に最大限に高めなさい。

 こんな話を始業式でしました。以下は、時間がなかったので話すことができなかった内容です。

 それでは、21世紀の社会を生き抜く力とは何かということです。當作先生は、様々な力が求められるが、「今、アメリカで注目されているのは、不屈の精神(GRIT)です。GRITとは、長期的ゴールを達成するための忍耐力と情熱です」と言っておられました。GRITには、5つの性格があります。①失敗をおそれない勇気 ②目標達成に集中する誠実さ ③最後までやり通す長期的コミットメント(真剣さ)と忍耐力 ④楽観的、自信、創造性を持つ復元力 ⑤完璧さを求めず、優秀さを求める この5つです。まさに何が起こるかわからない21世紀を生きる力だと思います。そして、何が起こるかわからない故に「常に学び続ける生涯学習者にならなければならない」とおっしゃっていました。

 最後に、学ぶことができる今の環境を最大限生かして、学んでください。

学びは生きていくうえでの「武器」です。