高校時代の私 episode 5

 高校1年2年はとにかく部活をした。勉強はそれなりだったが、先生がびっくりする程、本を読んだ。3年になって部活引退後は必死に勉強したが、夏休みに気分転換も兼ねひとりで志望大学の下見に東京へ行った。幼稚園の友だちがそのまま高校まで一緒、というような田舎の高校生にとっては異文化体験だった。当時、オープンキャンパスという企画はなく、ただただ憧れの大学をどうしても見たくて夏休みの大学へと潜入した。インターネットもない時代、いつも受験雑誌を見て憧れていたキャンパスに立ち、とても感激したことを憶えている。

 その夜は新大久保にある安宿に泊ったが、その時、もうひとつの異文化体験をした。4人の相部屋だったのだが、日本人の私とバングラデシュ人、イギリス人、台湾人という組み合わせ、みんなバックパッカーだった。部屋では容赦なく英語が迫ってくる。水シャワーを普通に浴び、音も匂いも肌感覚も距離感もまったく違う。部屋を抜け出してみても、私以外の客はみな外国人。以前仕事で4年ほど海外にいたが、あのたった一晩でそれよりもずっと強烈な異文化体験をした。世界はカオス、衝撃だった。「人生観が変わりました。」夏休み明け、私は担任のK先生に興奮しながら話した。

 高校時代の体験は大切だ。一見無駄に見える体験も含めて大切だ。にもかかわらず、体験することに強い制限を受けている今の君たちの状況は、とてつもなく異常で理不尽だ。しかし私はこう思う。この理不尽をもろにぶつけられた者たちにしか分からないことがある。その辛い思いを強制された者たちにしかできないことがある。最後は今のこの体験も無駄ではなかったことになるはずだ。だから、自分を見失わぬよう、情熱と冷静をもって日々にのぞもう。もう少しで日常が戻ってくる。私もみんなに負けないよう頑張る。

*高校時代の私、は本章にて終了いたします。ありがとうございました。  学校長

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