京都大学 総長のお話…

 8月26日付けの読売新聞に京都大学の総長である松本紘氏の記事が載っていました。記事の内容は、世界を意識した京都大学の改革の内容で、「京都大学の総長の国際公募を試みた」という記事です。安倍内閣は、世界ランキング上位100位に日本の大学10校がランクインすることを目指していますが、それについても様々な提言をなされています。

 私が、今回京大総長のことを取り上げさせていただくのは、たまたま総長執筆の「京都から大学を変える」(祥伝社新書)を読んでいる(ほぼ読み終えた)最中だからです。総長は、この本の中で京都大学の改革について約半分の紙面を使って述べられております。「なるほど!」と思うところがたくさんあるのですが、私が興味深く読ませていただいたのは、前半部分です。この部分で総長は、現在の日本の大学事情、世界の大学事情を述べられ、如何に日本の大学が「豊ボケ」しているかを指摘されています。それに比して、世界の特にアジアの学生が如何に熱心で優秀かを述べられています。総長は、日本の大学および学生がどうして「豊ボケ」になったかを分析されているのですが、そこで高校教育についても多くのことを述べられているので、紹介したいと思います。読んでいて「その通りだ!」と思うところばかりです。

 総長は、日本の大学がダメになった理由の一つに、高校での学びを挙げられております。高校のカリキュラムは弾力的に運用されるようになって久しいです。私が教員になった30年ほど前は、ほとんどの科目が必修になっており、2年生までは多くの生徒は共通の科目を学びました。物理にしろ生物にしろ理系、文系にかかわらず学びましたし、世界史も日本史も地理も学びました。ところが、この30年間ほどカリキュラムは、一貫して弾力的に運用されるようになり(つまり選択する幅が広がり)、どんどん必修というものが減っています。総長は、この「カリキュラムの弾力化が、日本の学生をダメにした」と述べられています。さらに、AO入試や推薦入試で受験科目が減少傾向にあるので、大学受験に必要な科目は一生懸命勉強するが、必要でな科目は学びもしない。だから、世界史は知っていても日本史は中学レベルしか知らない、とか、医学部にいるのに、生物を勉強していない、工学部なのに物理を勉強していない、という学生が大学に入学してくるようになったということを指摘されています。付け加えて私から言わせてもらうと、数Ⅰは知っているけど、数Bは知らないという学生も増えたと思います。数学Bにはベクトルや数列などを学ぶのですが、数列を知らない、ベクトルを知らない大学生は、私から見ると奇異です。

 ですから、総長は「土台がいいかげんでは、いい家が建つはずはありません。勉強するのは受験科目だけでそれ以外は中学まで、後はほったらかしでは、人として当たり前の知識や常識すら持たない学生や社会人が出てくるのも無理はないのです。大学生が劣化したのまさにそのためで、要するに高校までの中等教育で身につけるべき基礎学力が担保されていないのです」(p35)と指摘されています。そしてアップルのスティーブン・ジョブスの言葉「アップルの製品は、リベラル・アーツ(教養)とテクノロジーの交差点から生まれた」(p45)を引用し、リベラル・アーツの重要性を説いておられます。

 なぜ幅広い知識と教養が大切か?総長はそれを「unlearning(アンラーニング)」という概念で説明されています。少し引用します。「入学後に何か新しいものを創り出すには、幅広い知識や教養が不可欠であるとと同時に、それらを一度棚卸して、本当に自分が正しいと思うものだけを棚に入れ直す必要があるからです。それは言葉を換えるなら、それまで蓄えてきたすべての知識や考え方、物の見方を『まちがいかもしれない』と疑い、いったん白紙に戻す作業です。これを「アンラーニングunlearning)」 と呼んでいますが、その前提は高校時代の幅広い学びです。それがないと疑いようもない。」(p41)と述べておられます。後半の京都大学の改革のところで、もっと詳しく丁寧に高校段階での幅広い学びの必要を説いておられますが、ここでは割愛します。

 さて、市岡高校の話をしましょう。市岡高校は単位制です。京大総長の言われるカリキュラムの弾力化が究極に進んだシステムです。極端な話、すべての生徒の時間割が一人一人違うということも起こりうるシステムです。今、1年次生、2年次生の生徒の皆さんは、次年度の科目選択の時期にあります。科目を選ぶのは、最終的には自己責任で選ぶことになりますが、この単位制というシステムをうまく利用してほしいと思います。「選択できるなら、必要な科目だけにしよう、不得意な科目はやめよう、受験に関係ないからやめよう」という消極的な利用ではなく、幅広く学び自らの教養を広げるために選択してほしいと思っています。京大の総長の話を紹介しましたが、京都大学をめざす生徒だけが関係する内容でないことは、自明です。これから大学で学ぼうとする高校生全員が関係する内容を総長は指摘されています。科目選択を提出する前に、もう一度「この選択で、ほんとに幅広い学びができるのだろうか?」という観点で考えてみてください。そして総長の本を一度読んでみてください。

1409040838161.jpg 保護者の方も総長の本を読まれたほうがよいと思います。後半は、京都大学の改革の話ですが、前半は現在の大学事情がほんとによくまとめられています。その大学事情は、近未来の日本の社会事情に直結します。是非、この本を読まれて、家庭で高校での学びや大学での学び、そして「本当にこの科目選択で良いのか」の最終確認をされたほうがよいと思います。1409040868678.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

1409040917052.jpg 以上、文化祭に向けて盛り上がっている市岡高校ですが、少しその先の事を書いてみました。今もブラスバンドの演奏と生徒の歓声が聞こえてきます。あまりにも楽しいそうな声と軽快な演奏が聞こえてきたので、練習にお邪魔しました。上の内容とは関係ないですが、とても生徒たちが生き生きしていい顔をしているので、写真をUPしました。市岡生!最高です!1409040886064.jpg

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