世代を超えて(授業見学1)

 授業見学。各学年の教室に行く。さらに、貴重な5分をいただき、アンケートを実施している。生徒の視線が暖かい。より良き日々が迎えられるよう力を添えてくれる。

 数学、私にとっては、はるか遠くにある学問ですが、もっといろんな解き方がある、どんどん伝えてくださいという呼びかけやゴールを丁寧に示し、シンプルな形に落とし込んだ指示をすることでタスクを明確化して問題に取り組む方法をとられておられました。うまく働きかけることでアイディアを引き出しながら解答・解説する技に唸りました。

 理科、化学では中和滴定について、実験の準備から、実際に実験をするところまで2時間連続で見せてもらうことができ、「なぜ」の問いから、「こうなる」という一連の学びを生徒と共有でき、充実した時間が過ごせ(まし)た(ような気になっています)。物理の授業では、本時間の全体像、ゴールを示したうえで授業を展開し、何をどの時点でどう学ぶかを意識した生徒たちの様子を拝見しました。「自分はこう思うということを答えないと学びが始まらない」主体的に学ぶことで深い学びが得られる、このことを繰り返すことで論理的思考力、表現力が身につく。さりげない一言に一生ものの力が宿ることが示唆されていました。

 英語、3年生のW、2年生のR、完全な英語教師引退勧告でした。圧巻です。Wの授業では、生徒の作品を添削される際の説明の切れ味、引き出しの豊富さ、時代の流れを的確につかんだ上での語彙選択。一瞬の判断で正誤を見極め、より良きものを提示する。まさしく名人芸でした。何十年も英語と向き合い、問いや答えと対話してこられたからこそ至る境地です。ご説明されるたびに、自分の中でも用意をしましたがとても及びませんでした。

 Rは教科書での学びを、実際的に取り入れてもらえるように、スピーチされている映像を用いての授業だった。海外研修に生徒を連れて行ったときに、コテンパンにやられて声も出なくなるような瞬間に何度も立ち会ってきた。もちろんこの映像には、subtitleがついていたり、授業内で内容に関する知識があることを勘案しても、そんなに簡単とは思えない内容だったが、すべてを理解できなくても情報をうまくつなぎ合わせることで対応が可能であるということを感じさせる機会を提供していた。ハンドアウトとなるプリントがうまくガイドし、質問に答えることで、中身をつかめるように仕立てられていた。このプリントを作るのにどれくらいの時間が費やされているのだろう。おそらくプリントを作り終えた後でも、もっとより良き問いがあるのではと悩まれたのではないかと思う。生徒のみなさんにとっても高いハードルかもしれませんが答えを探し続けてください。英語学習は螺旋階段です。同じ景色しか見えないので気付かないかもしれませんが、どんどん上っています。ふと下を見たらこんな高みに達していたのかと気付く日が必ず来ます。今までかかわった多くの卒業生が私にそう教えてくれました。

 ベテランの先生方の横綱相撲。若手の先生方のチャレンジ精神。中堅の先生方の基本に忠実かつ真ん中をまっすぐに往く授業。

 あぁ、気持ちいいノックアウトでした。リングの上で大の字になって見上げる天井はとてつもなく高く、ライトは煌々と照り、まぶしかった。