父を超える
今年の全国高校野球選手権福島大会の、 K高校との試合が僕の高校野球の最後の試合だった。 九回二死、僕は二塁に立っていた。 スコアは8対10 早い回に信頼するエースが打ち込まれ、大量失点を奪われていた。 去年までのウチなら、 コールドゲームになりかねない展開だった。 でも今年のチームは違う。2回戦でS高校に打ち勝った。 S高校は昨年まで2連覇をし、昨年は甲子園でベスト8まで進んでいる強豪チームだった。 しかも地区大会では、 昨秋から今シーズンまで、 3戦して3敗。 徐々に戦力
が拮抗してきたとはいえ、まだ高い壁として立ちはだかっていたチームであった。そのチームに8対6というスコアで打ち勝ったことで、一気に甲子園への夢はふくらんでいた。
この4回戦に勝ち抜けば、夢が実現する。 そんな気持ちもキャプテンを務める自分の心にもあったしチーム全体にもあった。 大量点差は、主砲のホームランをきっかけにして徐々に縮まっていた。 主砲は、 そのホームランでベースを回るとき、いつものように喜びを爆発させず、厳しい表情でホームインした。 勢いは、ウチにある。僕は思った。
九回二死満塁、 点差は2点。 外野は前進守備である。 いい当たりが外野を越せば3点が入りゲームはひっくり返る。 バッターボックスにいるのは、 2年生ながらバッティングセンス抜群の仲間だ。 彼なら必ず打つ。 僕は信じた。 K高校のピッチャーの投げる速球に、 あっという間に2ストライク。 しかし、 バッターは粘る。 徐々にタイミングが合ってきた。 ピッチャーが投げこんだ直球に、ジャストミートした。当たりが左中間に低い弾道で伸びていく。 打つと同時に僕はスタートを切り、逆転と思った瞬間、守備位置を前もって移動していた左翼手のグローブの中にボールが吸い込まれていったのがわかった。
僕の甲子園への夢は終わった。 結局、 僕らを敗ったK高校が甲子園に初出場を果たした。 今、僕は受験生として勉強の毎日を送っている。 僕には新しい夢がある。将来、 高校野球の監督になって甲子園に出場することだ。 僕の父は甲子園球児だ。僕はその父を超えたいと思って、これまでがんばってきた。 しかし選手として甲子園に出場するという夢は終わった。 しかし指導者として甲子園に出場できれば父を超えることができる。
3年 小林源太
「高校生の夢」47都道府県 47人の高校生の夢 ~夢を持って進路を決める~
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