多くの卒業生や保護者の方が校長室のドアをノックしてくださった。「校長先生、来年もいるんですか?」と尋ねてくれた1組の5人。一番前にいたから、式辞の際には何度も見つめた。一生懸命聞いてくれる姿が奮い立たせてくれた。そしてそれをお伝えした。
保護者の方と一緒に来室してくれた。1・2年の時、毎朝、必ず挨拶をしてくれた。毎日欠かさず、笑顔絶やさず。3年生になり朝早く登校し、自習をしていた。だから会えなかったのか...。笑顔のパートはあなたのことですよ!
行事委員と人権委員、そして文化祭の実行委員、執行部の人たちが訪ねてくれた。バスレクはあなたが心を込めて用意したものですよ。心撃たれたなあ。人権講演会でお話しさせてもらえたこと、最後と分かって話しできることがいい。LastではなくFinalだ。きちんと踏まえて依頼されたこと忘れない。
励ましとねぎらいの言葉をかけてくれた。今日は言葉はいらない。訪れてくれたことがいたわりです。将来大きく羽ばたくことを祈念した。
面接練習をした成果報告をしに来てくれた。120%の自分を出し切れました。面接で力を発揮できたこともうれしかったけれど、人生の中で自分の宝物を見つけられたことはもっと幸せですという言葉を届けてくれた。そう、一番大事なことは、そこ。だから時間をかけて必死で光るものを探す。一緒に探す。一緒に磨く。光は輝きに代わる。
カンガルーを取りに来てくれた。お母様もご一緒に!私のカンガルーが役に立つならお供させてくださいという気持ちでいっぱいになった。多くの生徒が受験会場までもっていきましたと告げに来てくれた。あなたの試験もすぐそばで声援を送れますように!
式辞に書ききれなかった言葉たち。「焼き芋します。来てください。」「軽音楽部、演奏します。多目的ホールまでお願いします。」「観天望気のプレゼンやりますのでお時間あればどうぞ。」宿泊野外ラフティング時、「お昼ご飯一緒に食べましょう。校長先生、ここ空いてます。」最後の登校日、「おはようございます。」隣の友達を見ながら、今日最後の日やから大きい声であいさつした。シンガポール研修の時にもらったカンガルーを会場に持っていきます。書ききれない想いをたくさん残して77期生への最後の言葉を送りました。以下が式辞です。
式 辞
○ 綻ぶ、和らぐという言葉が急速に春の訪れを告げる今日の佳き日に、大阪府立茨木高等学校 第七十七回卒業証書授与式を保護者の皆さまやご家族の方をお迎えして挙行できますことは、教職員一同この上もない喜びであります。
○ はじめに、公私ご多用の中ご臨席賜りました、久敬会、PTA・後援会・ゆうかり会の各ご代表のご来賓の方々に高いところからではございますが、心からお礼申し上げます。誠にありがとうございます。皆様方には、平素より本校教育に深いご理解と多大なご支援をいただいておりますことに、この場をお借りして改めてお礼申し上げます。
○ ただ今、卒業証書を授与した三百五十九名の七十七期生の皆さん、卒業おめでとうございます。
○ マスク着用で行われた入学式。みなさんは、月日が経つにつれて「ありがたみ」が「あたりまえ」になる日常に戸惑いを覚えながら高校生活を過ごしてきました。
○ 1年次、まだコロナウイルス感染症の影響が色濃く残り、伝統の行事を一つひとつ復活させようとする先輩方の背中を懸命に追いかけながら0から1を作る難しさ、大切さを学んでいこうとする姿に刺激を受け、1年めの私も共に走り始めました。
○ 2年次、宿泊野外活動、すべての参加者の心に残ることを意図して練られたプランは、それぞれのコースに参加した人にしか味わえない貴重な体験だったと思います。移動の際のバスレクはいずれも行事委員の愛情があふれる催し物で満たされていました。寸分の隙もなく楽しもうとする姿勢は、天候その他の理由で、変更を余儀なくされても、そのすべてを受け入れ、受け止め、与えられた条件の中で喜びを身に着ける術を携える機会となったのだと思います。その受容力の高さ、柔軟性は雨に見舞われた妙見夜行登山でさらに磨かれました。最後の休憩所から叩きつける雨の影響で体が冷え切っていたにもかかわらず、閉会式時にはお互いの頑張りをたたえあい、行事委員を労う暖かい拍手、熱い言葉が飛び交いました。
○ 課題研究の発表会では、研究内容に対しての興味、発表者に対する敬意を素直に表し、レベルの高さに対する止まないざわめきは一定の緊張と緩和をリズムよく味わえる新しい潮流を生み出しました。
○ 3年次、人権講演会では、委員の中で何度も話し合いがなされ、生徒の力で作り上げ、難しいトピックに対して真正面から向きあいました。その姿勢に共鳴した参加者の一人ひとりが意見をぶつけ合う姿に頼もしさを感じました。
○ 3年最後の体育祭、応援団、マスコット、マスゲーム、すべての活動に携わりやり遂げたことがこれからの皆さんの人生をずっと下支えし、背中を押してくれることは間違いありません。そのこと、そのものの素晴らしさはもとより、閉会式時総団長からのメッセージを包み込むような、暖かく受け入れるまなざしで、物音ひとつ立てずに息をひそめて聞く様子、みんなで頑張れたからこそ、みんなでやり切れたからこそ、みんなで認め合えたからこそ、届く言葉、通い合う想い、おそらくもう2度と同じ光景に出会うことが叶わないかけがえのない時間でした。
○ 前期試験の直前までいつもの時間に登校し、みんなで過ごした学校で、最後の瞬間まで力を尽くしたたくさんの77期生。廊下から勉強する様子を眺めて、この3年間での歩みを象徴してくれている佇まいに、音のない拍手を送っていました。
○ 入学式でお伝えした言葉Anxious。aboutを伴うと「不安」forを伴うと「切望」。3年間でうまくいかなかったこともたくさんあったと思います。私自身も、生徒玄関で青空を見上げることが難しいと感じることが数多くありました。その度に、多くの77期生は大きい声で、笑顔で、こちらを向き直り、立ち止まり、姿勢を正して、深々とお辞儀をして、「おはようございます」を届けてくれました。交わす言葉の数は10文字です。その10文字が毎朝、大きな力と勇気を与えてくれました。言葉にすることが苦手な人は、視線で、口の動きで、会釈で、表情で、気持ちを届けてくれました。今日、今、ここで私がお話できているのは皆さんが届けてくれた10文字に乗せられた「何か」のおかげです。それは人それぞれ違うものです。でも「何か」を与えてくれました。その「何か」について交わした言葉ややり取りをご紹介して式辞を結ぼうと思います。
○ 宿泊野外活動、ラフティング時、渓谷からオールを上げての「団長~」の大絶叫。
文化祭、クラスの出し物への出演依頼。クイズを一緒に考える。ブログの話をする。2度めに校長室を訪れたときにはブログの内容を頭に入れて再度依頼。出演の必要性を説き、すべてを終えた後に招待状を兼ねたお礼の手紙までいただきました。
音楽会、「群青」、「正解」。音楽がなぜ時代を越えて、人と人とを結びつけるのか。若い世代に世の中を作っていく力が携わっていくのはなぜかという問いの答えが歌、曲、詩、そしてミュージカル中の歌とダンスの中にありました。舞台上での立ち姿、息を吸う姿、声の発し方、息の合ったダンス、そのすべてに心を奪われました。
人権講演会での登壇について、他校の校長先生をお招きする流れから私がお話しする必要性がないことを説明した際に、77期生最後の学年行事だから一言話してほしいという依頼を繰り返ししてくれました。その二日後、競技場で偶然出会った私にその話の内容が心に残りましたよと声をかけてくれた海外での経験を携えた77期生の言葉。
今年1月、最初に登校した日、「年末の挨拶『辛い・吐き出す』を聞いて心配しています。大丈夫ですか。」という労い、励ましの言葉。
体育祭での「大丈夫」、妙見委員長の事後報告での感謝を綴る言葉、対面式でのwind、部活動、近畿、全国大会やヨーロッパ遠征などの報告時に伝えてくれた意欲、学び、向上心などとても伝えられない数々の交わした言葉の中に人を包み込み、勇気づけ、力づける「何か」が携えられていました。
○ 77期生のみなさんへのお願いがあります。みなさんの「言葉」や「佇まい」には、なにげない、さりげない、でも間違いなく確かな「暖かさ」があります。身の回りの誰かが「暖かさを携えた何か」を必要とするなら、ためらわずに包み込み、その「何か」を差し出せる人でい続けてください。そして届けてください。その「暖かさ」を受け取った人が次の誰かに差し出した時、人を大きく包み込む社会への第一歩になることは間違いありません。
○ 最後に、保護者の皆さま、多くの機会、場面で様々なご心労をおかけしたことを心からお詫び申し上げます。保護者の方々からもお会いする機会がある度にお声がけいただき、お力添えをいただいたことに心より感謝いたします。「声なき声も届いていますか」とお力を授けていただいたことを何度も言葉にし、心の中で大切に携えていました。ありがとうございます。
○ 高い倍率の中、不安を抱えての受験。合格を果たし、入学するも思い描いたように過ごせない高校生活に戸惑うことも数多くあったことだと思います。時にはお子様に声をかけ、心を寄せ、力を添え、時には声を押しとどめ、そっと遠くから見守る日々もあったことだろうと思います。1000日を超える茨高生活の末、本日を迎えられたことに対して心から敬意を表するとともに、行き届かないことも数多くあった本校の教育活動にご理解、ご協力、ご支援いただきましたことに心より感謝申し上げます。本校にお子様をお預けくださりありがとうございました。皆様にとって大切な宝物であるお子さま一人ひとりをご家庭にお返しいたします。お子さまのご卒業、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
○ 77期生の皆さん、最後にもう一言、「おはようございます」の後、毎朝伝えたかった一言。「今日も登校してくれてありがとう、今日一日がいい日でありますように。」を添えさせてください。そしてずっと言えなかった一言。「茨木高校に入学してくれてありがとう。みんなと出会えて本当に幸せです。」みなさんが与えてくれた「何か」が全部みなさんとその周りの人の幸せにつながることを心から願い、祈り、私の式辞といたします。
令和七年二月二十八日
大阪府立茨木高等学校長
高江洲 良昌
もう一つ消した言葉、
そして本当の最後に、校長としてふさわしくない一言を添えて結びとします。「みんな、大好きだよ」。