自分にできることをとことんやっていく

 トータルでは3年間、本企画については数か月かけて実施に至った。3年生(77期生)人権講演会が6月13日クリエイトホールで行われた。府立柴島高校の森田正良校長先生を講師としてお招きし「同和問題と人権を学ぶ意義」「なぜ人権について学ぶのか」というテーマでご講演をいただいた。2部構成になっており、1部での先生のご講演を受けて、2部では生徒のディスカッション、それに対するコメントという受動的ではない双方向での学びを意図した企画であった。人権委員と森田校長先生、そして係の先生方の間で、何度も、中身の濃い打ち合わせを経ての実施、開演する前の幹部をはじめとする人権委員のメンバーの思い、緊張感が伝わってくる。

 ご講演が始まり、森田校長先生が取り組まれできたこと、その中でお感じになってこられたエキスがたくさん詰まったお話が次々と示されました。冒頭で先生がお示しになった「一期一会」。まさしくその場で出会った人だけが知りえたこと、そしてそれぞれが感じたことを伝えていく役割があることを踏まえ、ここ(本ブログ)での詳細なご披露は差し控え、受け止めた生徒の一人ひとりの心と力に委ね、これからの学校生活、人生の中で実りあるものとして生かしていってもらうことを心から願います。

 2部のディスカッションの中で上記の願いが叶う場面に遭遇し、十分に振り返り、受け止めた中身の共有、物事の捉え方、これからの自分の進んで行く方向性などが示された。

 キーワード、「取り残さない、切り捨てない。無理しなくていい、でも無視はしてほしくない。人権課題の根幹。異質なものの排除、未知のものへの恐怖。見なされる。見えにくくなる。正しい知識と理解。どういう社会をつくっていくのか。」だけをお示ししても、振り返るものがたくさんあり、「これまで」と「これから」を考えていくための示唆に富むチップがあふれている。

 森田校長先生には、何度もお運びいただき、事前の話し合いから、本日のご講演のご準備、そしてご講演、更には講演後の質疑応答に至るまで力を尽くしていただきありがとうございました。生徒へのご講演でしたが、私自身の学びが大きく、深く、これからの生きていく力を得ることができました。重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。人権委員のみなさん、無事開催が叶いました。それぞれの想いは幾通りもあると思いますが、企画、実施されたことは一生あなたたちを下支えします。そのことが何よりも尊いことだと思います。お疲れさまでした。そしていい時間をありがとうございました。

 

 中身の濃い、学術的にも、実学としてもレベルの高い会の最後に、お話をさせてもらう機会を得たので併せて以下に掲載いたします。

 36年にわたる教師生活の中で3年間担任をした学年は4回(3校)、担任をせず3年間担当した学年は2回、本校77期生は私にとって7回めの3年間を共にした学年です。人権講演会の中身を考えても、自分がここでお話をすることはそぐわないと思いご辞退申し上げましたが、77期生単独でのお話はこの会が最後になるので話をしてほしいと再度、依頼されました。これ以上に幸せなことはないと感じ今こうしてお話をしています。

 今日お話ししたいのは私の教師としての恥ずかしい、稚拙な失敗談です。教師になりたての2年めから4年めまでのお話です。陸上部の顧問として、走高跳を専門としていた3人の選手とのやり取りです。A,B,Cの3人の選手は3人3様でAは明るく、いつも自分の意見をはっきり言うがゆえによく話を聞き、しないといけない生徒でした。Bはどちらかというとクールでマイペース。我が道を行くタイプ。そしてCはいつも気配り、心配りができ周りに声掛けをし全体をまとめ上げていくタイプでした。何かが起こったときにいつもいろんな話をし、最後に「Cは大丈夫やな。いつもありがとう。」と締めくくるのが常でした。卒業後20年以上たちOB会の場で懐かしい面々と話が弾みました。Cは当時のことを振り返りながら、毎回大丈夫と声をかけられ、その度に笑顔でうなずいていたけど大丈夫じゃないときもあったとほほに涙しながら告げました。がすぐに、「先生、今、大丈夫?と聞いてください。」と一言。「大丈夫?」と私。「大丈夫じゃない。」とC。「自分の娘の学校生活について相談に乗ってください。20年分ね...。」と続けた。娘と自分を重ね合わせながらしてくれる話を受け止めながら過ぎていく時間を愛おしんだ。

 相手のことを思っているつもりで発していた言葉。追い詰めていた言葉。気づかずにいた20年。取り戻す機会をくれたやさしさ。救われた10年前。

 最後のメッセージとして皆さんにいつものように問います。あなたにとって一番大事な人は誰ですか?自分自身は自尊感情はかなり低く、だからこそお願いしにくいのですが、どうか一番大事な人は自分自身だと応えてほしいのです。そして、自分の向き合っている、周りにいる一人ひとりもそれぞれが一番大切な自分を持っているという思いを心の中に携えて言葉を交わし、心を通わしてほしいと思っています。苦しい、困難を表す英単語はtrouble, difficulty「~するのが困難だ」の表現の時には不可算名詞です。つまり形がないのです。だから気持ちだけが「困った状態」が継続するのです。解決するためにはその中身を形あるものつまり可算名詞にする必要があります。それが「問題」problemです。A problemになったときに解決への糸口が見え始めるのです。学ぶ、学習することによって「困難」trouble, difficultyはproblemになり、to find a solutionへと繋がっていくのだと思います。みなさんの人生が豊かなものとなることを心から願っています。これまで、今、これからを考えていく上で示唆に富むご講演をいただいた森田校長先生、貴重な機会を頂きました。ありがとうございました。

(ご容赦)会場のスピーチ時より言葉を少し補ったり修正しています。