選手権に向けて⑨ 「実れ。」

現在四條畷高校サッカー部には、2人の主将がいる。

主に戦術やゲームプランについて考えることを担当する、サッカー内担当の主将。

そして、主にチーム運営や、サッカー以外の活動について担当する、サッカー外担当の主将だ。

僕はサッカー外担当の主将である。

1つ上の代のキャプテンから、僕達の新チームの役職について初めて相談があった時、僕の役職は"副主将"であった。しかし僕はどうしても主将になって目標に進んでいきたかった。そこで、先輩や先生方と相談し、"ダブルキャプテン"という形で新チームを迎えることになった。

最初は、「本当に自分がワガママを言って主将になって良かったのか」と思うこともあったし、ダブルキャプテンという体制に慣れない部分もあった。 しかしこの1年を振り返ると、2人で主将をやってきて本当に良かったと思う。

それぞれがそれぞれの得意な面でチームを支える、そして苦手な面は得意な人の力を借りて少しずつ克服していく。この考え方は、1年間のチーム運営の土台ともなった。

この1年間、サッカー外担当の主将として、たくさんのチームメイトと、何度も何度も関わって来た。 その中で、1つの言葉と出会った。

「人は変えられない」

僕はこれまで、本気でぶつかれば人は変えられると思っていた。だからこそ、僕がこの言葉を聞いた時、正直悔しかった。どこか寂しい感じもした。本当にそうなのかと疑った。しかし、それと同時に少ししっくり来る感じもした。

僕がこれまでチームメイトと関わる中で、「この人を変えることができたかもしれない」と思っていたことも、おそらく違っていた。

僕は、その人が変わるためのきっかけを与えているにすぎなかった。そしてその人は、そのきっかけを掴み、自分から変化して行った。 

逆に言えば、どんなに良い環境があっても、どんなに良いアドバイスを貰っても、結局は自分自身が行動し、自分自身で変えて行くしかない。

周りが自分の全てを変えてくれるなんてあり得ないのである。

僕は、成長するきっかけを与えてあげることは、「種をまくこと」だと思っている。

この1年間、僕は、悩みながらも、苦しみながらも、チームに対して種をまき続けて来た。これは意外にしんどいことであった。ほとんどの種は、気付かれることなく終わって行く。しかし、ごくごくたまに、まいた種が実を結ぶことがある。今まで積極的に行動していなかったチームメイトが自分から何か行動を起こそうとした時、自分の弱さに本当に向き合おうとするようになった時...
この瞬間こそが、僕が主将をしていて最もやりがいを感じる時であった。


僕は人を変えてなんかいない。

種をまいているだけ。

それで良い。いや、それが良いのかもしれない。 チームメイトのみんな、本当にありがとう。

これまで1年間活動して来て、「しんどいことが無かった」と言えば間違いなく嘘になる。本当に本当に楽しい時間であったが、上手くいかないことも多かったし、そういう時はやはりつらかった。メンタルがブレてしまう時もあった。

しかし僕がこの1年間、心の中で常に燃え続けていた想いがある。それは、「選手権で強豪校を倒す」という想いである。この想いだけは1秒たりとも弱まることが無かった。この2年半、全てをサッカーに捧げて来た。時には馬鹿にされることもあったし、冷ややかな目で見られることもあった。それでも、ただただ選手権で強豪校を倒したくて、必死に進んできた。

その選手権に、今このチームで挑めることが本当に嬉しい。それぞれが、自分達自身で成長して来たからこそ、今のチームは「戦えるチームである」と自信を持って言える。たくさんの方々への感謝を胸に、戦い抜く。

最後になりましたが、これまで僕達の1番近くでいつも支えてくださった先生方、本当にありがとうございました。この四條畷高校サッカー部という最高の環境で、本当にたくさんのことを学びました。 そして、いつも僕達を応援してくださっている皆様、本当にありがとうございました。明日からも引き続きご声援の程よろしくお願い致します。

明日はいよいよ選手権初戦。

今まで積み重ねて来たものを信じて。

さぁ、戦おう。

3年プレーヤー N

掲載:顧問浅田