選手権に向けて⑪「思い」

畷高サッカー部に入部して2年半がたつ。


初めはこのチームが嫌いだった。


サッカーよりサッカー以外のことを頑張って、技術がある人が試合に出れず、掃除や挨拶運動ばかりしている人が試合に出る。そのくせ強豪校を倒すことを目標にして練習ではひたすら叫んでいる。


もちろん先輩方は良い人ばかりで大好きだったし、サッカーが好きだったから楽しんでいたのだが、他の高校でサッカーをする友達がたくさん試合に出て活躍している話を聞くと羨ましくて仕方がなかった。


チームの方針を理解できなかったが、とにかく試合に出たかったから必要とされていることをこなしながら試合に出るために何をしたらいいのかを考えて過ごしていると6月頃から少しづつメンバーに選んでもらえるようになった。


途中出場ばかりだったが試合に出れる事がうれしくて嫌なことも頑張ろうと思えた。


夏休みを終え、初めての選手権を迎えた。


こんな中途半端な思いで試合に出ているとちゃんとそれ相応の結果がでるもので、選手権の舞台でチームに迷惑をかけ、自分が原因と言ってもいいほどのプレーで75期の夢を終わらせてしまった。


先輩達には今でも申し訳ないと思うがこの経験で初めて自分と向き合うことができ、自分を変えようと思えた。


次の選手権でリベンジするために、先輩達に成長した姿を見てもらうためにそこからは必死だった。


今まで目を背けてきたことにも向き合い、先生や多くの仲間に話を聞いてもらい、アドバイスをもらい続けた。


結局、散々文句を言ってきたサッカー外と向き合うことが自分に最も必要だという答えになり、何をして良いのか全くわからなかったがとにかく色々なことに手を出してみた。


掃除や挨拶や学校生活の細かなところまで今まで以上にこだわり、学年など気にせずチームを引っ張ろうと思い、とにかく自分にできることを一生懸命取り組むことを大切にした。


自分の思いを上手く伝えられなかったり、課題にどうやって向き合えばいいのか分からなかったり、どうしてもできないことがあったり、何度も壁にぶつかったがなんとかもう一度選手権の舞台に立つ事ができた。


1年前は全く緊張しなかった選手権が緊張で全く眠れなかったことをよく覚えている。


その緊張は先輩達が選手権にかける思いを理解し、スタメンとして試合に出ることの責任を感じていたからだと思う。


今まで長くサッカーをやってきていたが誰かの思いと共に戦うのは初めての感覚だった。


結果は負けてしまい悔しい思いをしたが、その悔しさも1年間自分と向き合い続けたから感じられたものだと思う。


あの日から1年。自分は副キャプテンになり、チームを引っ張ってきた。


副キャプテンらしいことはできず、なんなららしくないことしかしていない。自分が副キャプテンでいいのか、自分じゃない方がチームはよくなるのではないかと思ったこともあった。心が折れた時もあった。


だが、そういう時に力をもらえたのがひたすら頑張るキャプテンの姿やついてきてくれる仲間とサポートし続けてくださる先生達の存在、先輩達との思い出だった。


今自分がこうして副キャプテンとしていられるのはたくさんの支えのおかげである。


感謝しかない。そして明後日、いよいよ最後の選手権の初戦である。やれることはやってきた。


先輩にたくさん迷惑をかけた。


先生に怒鳴られたこともあった。


全力で戦いみんなと喜んだこともあった。


試合中、興奮で何度も叫んだ。


この2年半を全て鮮明に思い出せる。


最高の思い出しかない。


自分に関わってくれた全ての人への感謝を胸に自分らしく、全力で、泥臭く戦う。いつのまにか大好きになっていたこのチームで最高の仲間と勝利を掴む。


3年副主将 M

掲載顧問浅田