『体現」
高校でサッカーをするとは思っていなかった。理由は単純、サッカーを楽しいと思えなくなっていたからだ。小さい頃は純粋にボールを蹴ることが大好きだった。だが中学にあがってクラブチームに入り、すぐに挫折した。それからは本当にしんどかった。今まで楽しくて続けていたはずのサッカーが苦しいものとなり、サッカーをしてきた自分を恨むことさえあった。結果、中学3年の6月に受験を言い訳にサッカーを辞めた。今までのサッカーばかりの生活から解放されて最高の気分だった。これからはサッカーとは関わらずに生きていこうと思っていたが、どうしてか高校に入学すると自然とサッカー部に入部していた。入部したはいいものの、本気でサッカーをしようとは思わなかった。ただただ楽しくボールを蹴るだけにしておこう、それくらいの気持ちだった。
入部してしばらくするとチームの方針に不満が出てきた。自分より実力が劣っている選手がほんの1週間だけ周りより少し努力したくらいで試合のメンバーに選ばれていたからだ。今までは完全に実力主義のチームでプレーしてきていたため、到底理解できなかった。今の自分の実力があるのは過去の苦労と努力があるからだと思っていた。今まで苦しい思いをしてきたことも、上手くなるために努力したことも無いようなやつがほんの少し努力をしただけでメンバーに選ばれることに納得がいかなかった。それからはチームの方針に納得できず、サッカーに対してやる気も出ず、約1年棒に振った。それでも今、もう一度サッカーを本気で、楽しくプレーできているのは、こんな僕でも必要としてくれた77期の先輩方、先生、同期のおかげだ。僕に再び、サッカーを楽しいものと思えるようにしてくれた。本当に感謝している。
僕達の高校最後の大会が迫ってきた。この場所で全力で楽しくプレーをすることこそが、今まで支えてくれた人達にする最高の恩返しだと思っている。今までの恩返しを最高の仲間と共に選手権という最高の舞台で体現する!
3年プレイヤーT
掲載:顧問佐藤