6月30日(月)にタイ・バンコク都教育庁から、小学校理科教員106名の方が府教育センターを訪問されました。関西空港から日本での最初の訪問先である当センターに直行というスケジュールでしたが、疲れた様子も見せず、揃いのスカーレットカラーのポロシャツと黒のジャケットという装いで、とても穏やかで気品のある方々でした。 当センターでは、3つの会場に分かれて、大阪の理科教育についての説明と簡単な観察・実験を中心とした模擬授業形式の研修を受講していただきました。日本のカリキュラムへの理解を深めていただくために、日頃から小学校の「理科」研修で行っている内容で研修を実施しました。
物理分野では、日本の小学校でも大きな課題になっている電気の流れ方を考える研修を行いました。タイでも豆電球は教材として使われているようで、良い手際で一本の導線で豆電球を点灯させていました。「物理は苦手です」と言いながらも、真剣なまなざしで実験に取り組まれていました。
化学分野では、もののあたたまり方について、サーモインクを用いて対流の様子を観察し、法則を見出し活用する研修を行いました。サーモインクはタイでは珍しいようで、入手方法など興味深く質問されていました。
生物分野では、アカツメクサとナヨクサフジの花を解剖して観察し、花の構造を知るとともに、受粉している様子を確かめました。双眼実体顕微鏡で観察すると、とてもよく見えることに驚いておられました。
タイでは教科ごとに専門の教員が教えるということで、今回訪問された方々も理科専科の教員でした。少し言葉の壁はありましたが、どの教室でもとても熱心に取り組んでおられました。また、質疑応答では、日本の小学校の理科の授業時数や担任制などの制度についての質問や、サーモインクや双眼実体顕微鏡の値段など設備についての質問が次々と出されました。日本では教員がこのような研修を無料で受けられることに、驚きまた羨ましく思うと感想を述べておられました。
また、どの研修会場においても、「少し難しい内容も含まれていたが、とても勉強になった」「質問に丁寧に対応していたいだき、よく理解できた。」との感想が聞かれました。少しでも日本の、大阪の小学校理科教育への取組みを理解していただき、参考にしていただけるところがあればと願っています。
その後、近隣の大阪市立小学校3校(苅田、長居、依羅)の協力を得て、3グループに分かれての学校視察が行われました。それぞれの学校においては、簡単な説明のあと授業の様子だけでなく学校の様子も見学されました。理科に関しては、日本の小学校では普通に行われていることですが、子どもたち一人ひとりが育てているヒマワリやホウセンカに興味をもたれていました。また、子どもが飼っているザリガニについても、えさのことなど飼育方法について質問され、熱心にメモをとっておられました。また、廊下や教室に張ってある子どもたちの作品や掲示物、掃除道具を入れるロッカーなどにも関心をもたれ、質問されていました。タイの学校の雰囲気とはずいぶん異なるようです。
これまでも大阪府教育センターでは地域の学校との連携を進め、子どもを対象とした催しには大勢の近隣の子どもたちが参加してくれていますが、今回の取組みのように近隣の学校と連携して事業を行えたのは初めてのことです。
これを機に、周辺地域の学校との連携をさらに進めていくことができるよう努めてまいりたいと考えています。 (理科教育研究室)