できる範囲で

校長 片山 造

誰かに仕事を依頼する時、日常的に「できる範囲で」という言葉を使う。類義語には「できる限り」「なるべく」「可能な限り」「最大限に」「限界まで」などがある。似ているとはいえ並べてみると、ニュアンスや微妙な意味の違いを感じる。

小学校5年の時、担任は男性のいわゆる熱血教師だった。嫌な先生ではなかったけれど、口癖は「どんな時も一生懸命、何事にも全力で!」。少しでも手を抜こうものなら「こらーっ、なまけるな。まだまだできる!」と大きな声で怒鳴られる。そんな先生の期待に応えようと生徒たちも懸命に頑張っていた。

マラソン大会に向けての朝・放課後のクラス自主練習が始まった。先生の応援も日を追うにつれ激しさを増し、怪我を隠して参加している者までいた。それはなぜか?それは、(大好きな先生を笑顔にしてあげたいから)

そんな時、頭も良くてスポーツ万能、先生や友達から人気のある男子生徒が言った。

「みんな、(無理せず)できる範囲でいこうや」クラスがほっと一息ついた瞬間だった。気のせいかもしれないが、先生もそれから「がんばれ!まだやれる!」とあまり言わなくなったような気がする。

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