心に残っている先生の言葉

校長 片山 造

どんなことがあっても選挙にだけは行きなさい。

これは私の高校時代、社会科担当の先生が毎時間、必ず1回は言った言葉である。特別、その先生になにか相談しお世話になったわけでもない。その先生の授業が面白くて教員になるきっかけになったわけでもない。それどころか、先生の名前も顔すら覚えていない。

「選挙の話」は突然やってくる。例えば時事問題を扱った授業の途中で(世の中を変えていくには、やはり選挙に行くしかないな)と先生は誰に言うでもなく呟く。懸命に課題に取り組む生徒に向かって、(選挙に行ける日が楽しみだな)とニコニコ顔で話しかける。とにかく、毎時間、どこで(選挙の話)になるのか、そのタイミングがつかめない。いつしか、それだけを楽しみに、寝ることなくその授業を受けていたような気がする。もし、自分に振られたらどう答えようか、どう返すのが正解なのか?イメージは広がるばかりであった。

 高校を卒業し、大学に入り、教員になり...。時間の経過とともに、自分の置かれている場所や環境も変化していく。しかし、何処にいても何をしていても、選挙になるとその先生の言葉を思い出す。「片山 どんなことがあっても選挙にだけは行きなさい」先生と約束したわけではないが、30年以上その教えを守っている。そして、時に、生徒たちに伝えている。