読書?のススメ

校長 片山 造

 十年に一度、一年かけて辞書『広辞苑』を読むことにしている。本や新聞を読んでいると、なんとなく分かっているが本当のところはわかっていないそんな言葉に出くわすことがある。そんな時、よく『広辞苑』で意味を調べたものだ。調べているうちに、意味以外の解説や例文にも面白味を感じるようになった。そして、辞書を引くのではなく読んでみようと思うようになった。それが今から20年前のこと。

 辞書は、何年かに一度、編纂(内容の見直し)がおこなわれる。辞書編纂を描いた三浦しもんさんの小説『舟を編む(ふねをあむ)』は、2012年に本屋大賞、2013年に映画化もされている。あらすじは、出版社に勤める編集部員が、新しく刊行する辞書『大渡海』の編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられ、個性豊かな編纂者たちとともに辞書づくりの世界に没頭していく姿を描いた作品。「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」という意味でこの書名が付いている。

 映画の中で、採用のための面接シーンがある。そこで、編集長が主人公に「右について言葉の定義をしてください」と質問を投げかける。主人公は考えあぐねた結果「西を向いた時、北にあたる方が右」と答える。なるほど明快な定義だ。

 因みに、各辞書の「右」の定義は

『広辞苑』『広辞林』...南を向いた時、西にあたる方。

『大辞泉』... 東に向いたとき南にあたる方。大部分の人が、食事のとき箸を持つ側。
『三省堂国語辞典』 この本を開いたとき、偶数ページのあるほう・がわ。
『明鏡国語辞典』 人体を対象線に沿って二分したとき、心臓のないほう。


 前回、広辞苑を読んでから今年で10年。3回目の『広辞苑(第七版)』に挑む。今年は電子版で読んでみようかと思う。新しい出会いと発見があることを期待して...。