『極上の舞台』
2年生の選手権前、僕は完全に自信を無くしていた。
どんどん成長して試合に出る同期や自分よりも落ち着いてプレーできる先輩をみて、「俺が試合に出なくてもいいんじゃないか。」と本気で思ってた。
スタメンで出させて貰っても足を引っ張る。
迷惑をかける、だから自分は出ずにもっと上手い皆が出れば良い。
今思えば努力不足の自分を勝手に自己嫌悪して現状から目を背けていただけだ。
考えが変わったのは選手権の日。
ベンチにも入れず外から先輩や同期が全力でプレーしてるのを応援してた時。本当に応援しながら泣きそうになるぐらい悔しかった。てか泣いてた。
そうして3年生が引退して自分達の代が来た時に、もう後悔はしたく無い、78期のメンバーと肩を並べてピッチで活躍できるようになりたいと心の底からそう思った。
月日は流れて、IHが終わって、選手権まで残るかどうかの決断を迫られた時、決断の決め手になったのは「最後にサッカーと本気で向き合いたい」という思いだった。結局IHも体調不良で出れなかった自分にとってこの選手権がサッカーに向き合える最後のチャンス。ここで出しつくすとその時決めた。
そしてこの夏、僕は本当に残って良かったと思っている。新しく入って来た1年生と出会えた事、2年生ともより仲を深められたこと。
そして何より、最高な78期のメンバーと最後までサッカーを出来ることが本当に嬉しかった。そしてその嬉しさは、自分が本気でサッカーに向き合えてるという証でもあった。
外から眺めてるのは嫌だ。スタメンで出たい。勝ちたい。と、ここまで強く思えたのはサッカーをやって来た10年間で初めてだった。
そうやってどんどん熱が高まっていって、毎日夜遅くまで1人でボール蹴ったり、筋トレしたり、相手の研究をしたりもした。
恵まれた環境で打ち込めるものができて、好きなものに必死になれている自分を客観視した時、本当になんて幸せなんだろうと思えた。
この今の畷高サッカー部の環境を作って下さったのは、指導してくださった先生方、支えてくださるOBOGの方々、そして今まで一緒にプレーしてきた先輩、後輩、78期。
たくさんの人のおかげで今僕は最高に楽しい。本当に有難いし、感謝しかない。
最近は四六時中、選手権のことばかり考えている。勉強中も寝る時も。
「また緊張してるやん」なんて皆に揶揄われるかもしれない。でも今回は違う。もちろん緊張もするけどそれ以上に夢に見た舞台が目の前に来てる事にワクワクしてる。多くの人に応援され、大勢の前でプレーできる機会なんて先の人生でもう無いだろう。だから僕はこの最高の舞台を味わい尽くす。
そして、今までこのチームの全員で積み上げて来たものをここで証明するために、最高のチームで最高の仲間と、少しでも長く闘うために、僕は最後まで走り抜ける。
3年プレイヤーO
掲載:顧問佐藤