自分にしかできないこと

校長 片山 造

教師になりたての頃、廊下で頭髪違反の生徒を注意していると、そこに校長先生が通りがかり、「それはあなたにしかできないことですか」と聞かれた。それからはグラウンドでノックをしている時、授業をしている時...会うたびに、校長先生から同じ質問をされた。なぜそんなことばかり聞いてくるのが不思議でならなかった。

 7月末の文化祭の夜、自分のクラスの生徒と行燈(あんどん)行列で町を練り歩いた。北海道の素行が悪いと地域からよく思われていない学校で、町の人たちから声援を受けるわけでもなく、生徒たちも元気なく歩いていた。そんな中、人一倍大きな声を出していたのは私だった。そのうち、生徒たちも大きな声を掛け合って行燈を担いだ。町の人は誰も見ていないけれど、みんな必死で愉しい時間だった。そこに校長先生がやってきて、「これは、あなたしかできないことですね」とニコニコ顔で言ってくれた。

 自分にしかできないこと)それは何かを考え始めた、そんな瞬間だった。

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