気がついたこと

校長 片山 造

歌手のさだまさしさんの原作を映画化した『解夏(げげ)』という作品がある。映画の中で、TVドラマ半沢直樹でも幹事長を好演した俳優の柄本明さんがベーチェット病のため視力を失った老人を演じていた。

次第に視力が失われていく、そんな現実を認めたくなくてもがく毎日。ある朝、歯を磨こうと歯ブラシにチューブから歯磨き粉をのせようとするが上手くいかない。不安が押し寄せ愕然とその場に佇んでしまう。しかし、次の瞬間あることに気がつく。

(そうだ、先に歯磨き粉を口に含んでおけばこぼすこともない。)

なんだと思わず笑みがこぼれ、生きる力が湧いてきた、という時間にすれば10分にも満たないシーン。

私にとって、明日を切り開いていく工夫と勇気を教えられた10分でもあった。