校長 片山 造
町の図書館の新刊本コーナーで借りた本のタイトルは『失われゆく仕事の図鑑』。そこに載っているのは、アレもコレもヒトが手で創り、動かしていた時代の記録。
「町の花売り娘?」「新聞社の伝書鳩?」「紙芝居」「レコード屋」「ポン菓子屋」「映画看板師」「公衆電話」...。なんとなく話で聞いたことがある仕事、そう言えばと思い出す仕事や物、そこには懐かしい昭和の匂いがした。
中学の時、絵の上手な級友Aがいた。放課後の教室で、スケッチブックに向かい、真剣に何かを描いているAの姿が思い出される。なぜ教室なのか?美術部以外の生徒でも絵を描きたい生徒は、美術教室に集うのが慣例になっていた。これは、Aから聞いた話。美術の先生に「Aくんの絵は独特やねぇ」と言われたらしい。Aはその言葉に嫌な感情や意味?が込められていると解釈した。そして、美術室に行かなくなった理由を放課後の教室で話してくれた。その後、Aが私にスケッチブックをみせてくれた。そこには、映画の看板さながらに映画のワンシーンが描かれていた。その時、私は初めてAの夢である「映画看板師」の存在を知ることになった。
Aの絵は、なんとも言い難いほど味があり、Aしか描けないものであり...
一言で表現すると(独特だった)。PCによるCGグラフィックが全盛の現代、Aは今どうしているのだろうか?彼の夢はかなえられたのだろうか?
この先、今以上に我々の日常にAIが活用されることになる。「失われてゆく仕事」はなんだろうか。そして、「新たに生まれくる仕事」はなんだろう。考えてみたい。