卒業式 式辞

 本日ここに高等学校の課程を修了され、晴れて卒業の日を迎えられた皆さん、ご卒業おめでとうございます。ただいま、皆さんに、その証として卒業証書をお渡しすることができ、うれしく思っています。改めて、皆さんのこれまでの努力を讃え、心からお祝い申し上げます。卒業式は「最後の授業」であるとも言われています。これまで支えていただいた全ての方への感謝の気持ちをもちながら、この時間を過ごしてください。

 保護者の皆様、お子様のご卒業まことにおめでとうございます。心も身体もたくましく成長された姿に、皆様の胸にも熱き思いがあふれていることと存じます。あらためまして、福泉高校を選び見守っていただきありがとうございました。

 今年度も、新型コロナウイルスに翻弄された1年でした。本校においても臨時休業を余儀なくされました。今までの(あたりまえ)が(あたりまえ)ではなくなりました。先が見えない状況は今もなお続いています。一日も早くコロナ禍が終息し、社会そして学校に日常と笑顔が戻ることを期待するばかりです。

【午前の部】

 卒業にあたり、「ひとつの話とひとつの言葉」を贈ります。

 先日、北京オリンピック冬季大会がありました。北京をめざし頑張ってきた選手たちが、我々に多くの感動を与えてくれました。

 スノーボード男子ハーフパイプに出場した(平野歩夢)選手の話をします。平野選手は、今回が3度目のオリンピック。過去2回は、絶対王者であるアメリカのショーンホワイト選手に届かず銀メダルでした。そして今回、見事、金メダルを獲得しました。

 金メダル獲得直後のインタビューの第一声で平野歩夢選手はこう言っています。

(ようやく小さいころの夢が1つかなった)

 その言葉を聞いて、ぞくっとしました。こんなことをさらりと言えるなんてすごいと思いました。「夢」をかなえるには、強い意志とあきらめない心、そして、周囲の応援が必要です。昨夏の東京オリンピックは、スノーボードをスケートボードに履き替え挑戦しました。そこから半年後、ほんとうにおめでとう!

 平野選手は周囲の人々への感謝も忘れません。以下、平野選手の試合後のインタビューを紹介します。

 「ここまで来られたのも、家族だったり、身近にいる人たち、応援してくれてる人たちがあっての自分だと思う。自分の納得行く滑りがみんなに少しでも届いたんじゃないかなって。何か刺激になってもらえれば、それ以上はないかなって思います。」

【午後の部】

 卒業にあたり、「ひとつの話とひとつの言葉」を贈ります。

 先日、北京オリンピック冬季大会がありました。北京をめざし頑張ってきた選手たちが、我々に多くの感動を与えてくれました。

 スピードスケート女子500M1000Mに出場した(小平奈緒)選手の話をします。小平選手は、4年前のピョンチャンで、500Mで見事金メダルを獲得し、今回もメダル獲得が期待されていましたが、よい結果を残すことができませんでした。

 試合終了後、小平選手はインタビューで

 「成し遂げることはできずとも、自分なりにやりとげることはできた」と言っています。

 その言葉を聞いて、やり遂げた者だけしかみることのできない風景がそこにはあると思いました。

 また「この4年間、どこまで行けるんだろうと信じてくださった方々や、立ち止まりそうになるたびに温かい言葉をかけてくださった皆さんに何度も救われてきました」と周囲の人々に感謝し、「心も身体も、今ここにあるものは全て使い果たせたと思います」と完全燃焼できたことを実感されています。

 実は小平選手、1月に足を捻挫しながら大会に臨んでいたことがわかりました。現実を受け入れながら、目標の達成に向けて、周囲への感謝を忘れず懸命にあきらめず努力する。

 インタビューの最後は「生きている限り、生きることに向かうことで見えてくる未来もきっとあると思います。カタチには何も残らない五輪でしたが、この先もそよ風のように『あ、今の風心地良かったな』と思っていただける存在でいられたら幸いです」と自身をそよ風にたとえて締めくくりました。

 この言葉を聞いた時、経験によって生み出された(尊く重みのある言葉)であると感じました。

また、その選手とそれを支えてきた人々への感謝も込められているとも思いました。

 次に、ひとつの言葉。その言葉は(この瞬間からベスト)です。これは、私が始業式や放送で繰り返しみなさんにお伝えしている言葉です。私が今思う解釈をしておくと、(あきらめるにはまだ早い。自分で選んだ道だから。深呼吸して、ここから、今から自分なりの全力で、時には周りの力も借りながら進んでいこう)ということでしょうか。

 さあ、この瞬間からベストです。皆さんを応援しています!卒業おめでとう!これを贈る言葉として、私からの式辞といたします。

                      令和4年3月1日 府立福泉高等学校長 片山 造