教師の責任

 30年も前の話。ひとりの生徒の教員への言動が大きな問題となり、その進退をめぐって連日、放課後遅くまで職員会議が開かれた。私はいつでも野球部の指導に行けるよう、練習着で職員会議に参加していた。会議も3日目になり、私は我慢できなくなっていた。大会も近づき、グラウンドからは元気のよい生徒たちの声が聞こえてくる。私はその声に変化を感じていた。それは、マイナスの掛け声が多くなってきたということ。先生早く来て!という叫びにも聞こえてきた。生徒に申し訳がなかった。今日の職員会議で、生徒の処遇が決まる。生徒の進退に関わるそれまでの話し合いにおいて、教職員の中でも意見は二つにわかれていた。その生徒の人生の一端を自分が担っていると思うと逃げ出したい気持ちになっていた。

 私は会議の冒頭で、「すみません、野球部は大会も近く指導したいので後はお任せします。」と発言して職員室を後にした。いつもより長めのノックを済ませ、職員会議の終わるのを見計らって職員室に戻った。そこで、生徒は退学処分となったことを同僚の先生が教えてくれた。何とも言えない気持ちになった。今までそこにいた者がいなくなることは寂しい。