8月30日「残せるもの」

選手権1回戦が終わった。
チームは勝利し、2回戦に駒を進め、目標とする桜宮高校戦に近づきつつある。
それと同時に、3年生は負けたら引退という中で、
サッカー部で活動できる時間を伸ばすことができた。
 
自分は選手権1回戦のメンバーに入ることはできなかった。
夏休みで良いアピールができずにチャンスはどんどん無くなっていっている。
 
今年の春、僕はインターハイで1度もメンバーに入ることができなかった。
 
その時の自分はとにかく自分自身に情けなさを感じており、
自信を失い、どうにかしようと毎日考え、実行しようとしてきたが、
最後まで劣等感に打ち勝てず、何もできなかった。
 
そこから選手権で絶対にこの悔しさをぶつけると誓い、今日までやってきた。
 
しかし、現状はインターハイの頃と変わっていない。
 
残された時間、チャンスは本当に少ない。
 
今の自分が最も恐れていることは、
このまま選手権に向けて全ての照準を合わせ、本気で頑張ったが、
メンバー入りもできず、チームに貢献できない、
すなわちチームに何も残せないまま引退を迎えてしまうということである。
 
もちろん、今の自分が目指すのは間違いなく選手権の舞台。
だが、もしそれが叶わなかったときになんとなく引退してしまうことが怖い。
 
全てはここまでの積み上げが甘かった自分のせいであるが、
この高校生活の大部分を占めたサッカー部という時間を、
全力を出し、頑張っただけでは終わりたくない。
 
そうなったときに、自分ができることは他の誰よりも、
後輩に何かしらを伝え、影響を与え、
少しでも今後のチームの成長や後輩1人1人の成長を手助けすることだと考える。
 
そう考える一方で、これは選手権を半ば諦め、自分にできることを探して、
それをやればそれなりに綺麗な形で終えられるだろうという甘い考えのようにも思う。
 
でも、そうすることでこのチームに何かを残して恩返しできるなら、それは本望である。
何よりこの貴重な環境と大切な仲間への感謝はとても自分の中で大きい。
 
先日、ある1年生のブログにこんなことが書いてあった。
 
「周りの同期がAチームに残っている中で、
自分はBチームに落ちてしまい、モチベーションを失っていた。
だが、多くの3年生がAチームにいる中でも
Bチームで皆をまとめて引っ張ってくれる先輩の姿を見て、再び頑張ろうと思えた。」
 
この文章を見たときに、自然と泣きそうになった。
自分を含め、そういった1人1人の行動が
少しでも後輩に良い影響を与えれていることを知って、
チームの中での自分の存在意義を見失ってしまっていた僕は、どこか救われたような気がした。
 
これまで、サッカー以外の貢献の仕方があることは重々分かっていたが、
結局、サッカーをやっている以上は試合に出られないと存在意義を見出せないと思ってしまっていた。しかし、今は少し考え方が変わったように感じる。
 
僕も1年生の頃、当時Bチームだった先輩が良く教えて下さった。
 
その時はなんでこんなに1年生のために尽くしてくれるんだろうか
と疑問に思っていたが、今となってはその時の自分が恥ずかしい。
 
その先輩は自分が試合に出られなくとも、本当に常に明るく振るまっていたし、
当時先輩と全然コミュニケーションを取れていなかった僕にも積極的に話しかけて下さった。
 
その先輩に本当に良くしてもらった分、今はチームと後輩にその分を恩返ししたい。
 
もう残りの時間は本当に少ない。
あと練習が何回できるかも分からない。
 
1日1日を大切に、噛みしめながら、
チームに恩返しできることを考え、伝えられるものを伝える。
 
これからの少ない時間で、選手権という目標に向かいながら、
自分にできること、自分にしか出来ないことを探して、最大限チームに貢献していきたい。
 
3年プレーヤーT
 
掲載:顧問山磨