校長 片山 造
「アクティブ・ラーニング(=主体的、対話的で深い学習)」という言葉がしばしば聞かれ教育のトレンドとなっている。その手法は、ICT機器を用い、グループ学習や調べ学習⇒発表など多岐にわたっている。
私が教師として初めて赴任したのは、いわゆる(教育困難校)と呼ばれる学校だった。教室にいても授業に参加せず騒いだり、寝たりしている生徒が大半であった。先生が黒板に説明を書きながら質問し、生徒が答えるという一般的な授業の形は成立しない学校だった。そんな中、私は新米教師として生徒の関心をひくため、授業の内容や展開をあれこれ考え、工夫した。例えば、「新聞学習」「俳句・短歌・詩集等の創作活動」「3分間スピーチ」「プリント学習」「課題研究」「グループ討議」、生徒が相互に学びあうそんな時間をつくった。効果はてきめんだった。授業はアクティブなものになり、生徒も私も授業をたのしんだ。そんな合間に、本業の小説や評論、古典等いわゆる「国語」の授業もした。
しかし、私の心には、ずっと引っ掛かるものがあった。それは、教科書とチョーク一本で生徒を唸らせる授業がしてみたいという思いだ。野球で言えば、速球一本で打者と真っ向勝負してみたいということだ。これは長い教員人生において未だに達成されていない。
コロナが明け、全校集会や卒業式で、マイクを握り生徒や教職員・保護者を前に魂込めた言葉一本で勝負する日がくるのを待ち備えるばかりである。