忘れられない言葉たち

校長 片山 造

時折、ふと思い出しその度に勇気づけられる言葉がある。

「朝のこない夜はない」...大学生の時、学習塾でバイトをしたことがある。冬期講習会の国語の宿題で「あなたの好きな言葉」という課題作文が出され添削をした。「一期一会」「努力は必ず報われる」...希望に満ちた作文が多い中、(ん?)と添削する赤ペンの手がとまった。「朝のこない夜はない」15才の彼女に何があったのだろうと思いつつ、聞くこともなく今に至っている。そして、教師としてしんどいことに直面し、乗り越えなければならない時、この言葉をふっと思い出し勇気づけられる。今さらながら、この言葉は誰が発した言葉なのかを調べてみた。すると、『宮本武蔵』などの小説で知られる吉川英治氏の言葉であるらしい。今風に言うと、「深イイ」言葉である。

「どこに行っても、あなたを待っている生徒たちがいる。」...北海道で初任校から異動することになった。1校目は教育困難校と言われている学校だった。部活にクラスに生徒たちと暴れ回った。果たして2校目は?全校生徒数60名ほどの漁師町の学校だった。周りの先生方は(えっ、なぜ、そんなところに...)と驚きを隠しきれない。自分自身も、戸惑いやどうして私が...という思いがあったことは事実。そんな時、ある先生がニコニコ顔で「片山さん、どこに行っても、あなたを待っている生徒たちがいるよ、愉しみだね。」と言ってくれた。その言葉通り、その学校で忘れられない生徒たちと出会うことができた。誰しも日々不安な気持ちはある。しかし、身の丈をわきまえながら前を向いていると(何かが変わる)気がする。