日本語は難しい?

校長 片山 造

小学校3年の時のこと。学校から帰ると台所の机のうえに母からのメモが置いてあり、そこには、「びよういんにいってきます。心配しないでください。」と書いてあった。いつもはバリバリ働いていて、帰りも遅い母親がこんな早い時間に「びよういん」「心配しないで」とあったものだから、三輪がとれて乗れるようになったばかりの自転車に飛び乗り、近くのかかりつけの病院に行った。しかし、そこに母はいなかった。

泣きながら家に帰る途中で母と出くわした。泣きながら母に飛びつくと驚いた様子で「どうしたの、何かあったの」と聞いてきた。その時、私は「どこか悪いの?入院するの?」としゃくりあげ大泣きしながら母に尋ねたそうだ。母は一瞬、キョトンとしたが、次の瞬間、大笑いして「仕事が早く終わったから、美容院(びよういん)に髪をセットしに行ってきたのよ」と言った。

もう一度、過去の映像が観られる、そんな願いが叶うなら、是非とも母や家族とともにそれを鑑賞してみたいものだ。